しのぶに拘束されてから5日後、杏寿郎が目覚めたと聞いた。
会いに行く!とじたんばたんしたは良いがしのぶはにっこり微笑んでいるだけ。額には青筋、その中無理矢理会いに行く勇気はなく、涙を流しながら寝た。
「杏寿郎!」
「む、梨沙か!」
「ちょっと走らないって言いましたよね?梨沙さん」
「アッ……ごめんなさい……」
しのぶに首根っこを掴まれて大人しくなる。久方ぶりに見た杏寿郎は左目に眼帯をして、腕も無くなっていたが笑い方も、何もかも変わっていなかった。涙が出た。
「うう……杏寿郎がいきてる……」
「生きているとも!梨沙が居てくれなかったら此処には居なかったかもしれないがな!」
「泣いてる」
「ちょっと煉獄さん、梨沙さんを泣かさないでください」
「むぅ、すまん!」
めちゃめちゃ汚い泣き方している自覚はある、隣の空きベットに腰掛けて泣いていると杏寿郎が右手を伸ばして、涙を掬った。
「梨沙」
「……生きてて、よかった……!」
「ああ、生きているとも。梨沙も生きている……まぁ、柱としては活躍出来なくなってしまったがな!」
「心が痛い」
「煉獄さん」
「……むぅ」
しのぶが手ぬぐいを差し出す。遠慮なく顔面に押し当てて涙を拭う。
「杏寿郎」
「なんだ?」
「結婚しよう」
「ゲホッ」
杏寿郎の右腕を私の右腕で触れる。左腕は、お互いに使えないから。
凄く、真剣に言ったのに隣のしのぶから咽せる声が聞こえたし顔を思い切り逸らされた。
「……梨沙、もう一度いいか?聞き間違えか?」
「杏寿郎結婚しよう、私が杏寿郎を娶りたい」
「逆ではないのか?」
「なんで煉獄家全員逆じゃないのかって言うの!!!!私が杏寿郎娶って悪いかよ!!!!!」
「落ち着いてください梨沙さん、さぁ続きを」
「しのぶおもしろがってない?」
しのぶとちょっと言い合いをしているとじわじわと杏寿郎の掌の体温が上がる。それに気づいて顔を上げると、じわじわと、朱に染まる杏寿郎が居た。
「……槇寿郎さんにも、挨拶行って来たよ」
「よもや、よもや……」
「千寿郎くんには姉上と御呼びしたほうがいいのか、って言われたけど」
「……梨沙」
「杏寿郎、私と結婚してください」
「………断る、理由がなかろう!」
ワッ!と感極まって杏寿郎に抱きついた、もうすっかり薬品の匂いに変わってしまった杏寿郎。杏寿郎の右腕が、そっと私の背中に回った。
「ふふ、今日はお赤飯ですね」
「さつまいもも付けてね」
「好物なんですか?」
「杏寿郎のね」
ふふふと笑いながら部屋から出て行くしのぶ、あの笑いをしてるときはろくでもないが、今は幸せなので気にしません!
「杏寿郎」
「な、なんだ」
「私は杏寿郎が死んでたら、後追いしてたかもしれない。……恥ずかしながらちゃんとこの思いを自覚したのはこの、任務の後なのだけれど……」
「……うむ」
「色々未経験だし、すっとんで結婚って言っちゃったけどさ……嫌だったらさ……」
「嫌なわけあるか!……恥ずかしい話だが、俺は、ずっと梨沙の事を、好いている」
「知らなかった」
「だろうな!」
すごい満面の笑みで言われた。えっ?これ私だけ気づいてなかったパターンじゃない?地獄じゃん………。
「……もう、梨沙を抱きしめる事はかなわなくなってしまったな」
「いいよ!私が!抱きしめるよ!ちょっと今腕折れてるからさ!むずかしいけど!」
バッ、と右腕を広げれば酷く穏やかな笑みをした杏寿郎が居た。そんな顔をみたら、抱きしめるしか、することはないじゃないか。