「こんにちはぁ」
「あ!梨沙さん、こんばんわですよ!」
「あ、そうかもう日没したもんね」

蝶屋敷に着いた頃には日没しており、空は茜色に染まっていた。玄関から声をかけるとアオイちゃんがととと、と小走りで出迎えてくれた。

「鴉が蝶屋敷に戻れって言ってたんだけど……」
「はい、こちらですね」

そのままアオイちゃんに着いて行く、縁側に出た所で腰掛けたしのぶの姿を捉える。アオイちゃんはぺこり、と一礼をすれば戻って行った。

「任務、ご苦労様です」
「あの3人と一緒だったけどね」
「彼らも成長していっていますね」
「若さってすばらしいね」
「まぁ、梨沙さんだってお若いでしょうに」
「私よりも若いのに良く言う」
「たかが1歳ですよ、ふふ」

しのぶの隣へと腰掛ける、蝶屋敷には蝶が多く飛んでいる。夕焼けに染まった空の下でもひらひらと飛んでいる。

「呼びつけた本題なのですが、煉獄さんの事です」
「えっ、なにかあった?」
「煉獄さんからのご希望もありますが、あと3日程でここを出られるでしょう。その際、煉獄さんのお屋敷迄戻られるのでしょう?」
「うん多分。よく聞いてないけど」
「ほら煉獄さんは梨沙さんのお嫁さんですから、ふふ」
「……しのぶ、楽しんでるよね」
「いいえ?」

そう言いつつも羽織の袖で口を隠すしのぶ、肩が震えている。
しかしもう杏寿郎は蝶屋敷を出られるのか、杏寿郎の希望と言っていたが慣れない蝶屋敷よりは家で療養したほうが落ち着くのだろう。

「また出られる日には御呼びしますよ」
「うん、そうしてくれるとありがたいや」

バサリ、と私の鎹鴉が飛んで来る。次の任務の様だ。人手が居ないけれど私酷使されすぎじゃない??

「もう出られるのですか?」
「うん……忙しいね……」
「お声掛けしていかなくて良いので?」
「うーん、いこうかな」

しのぶは部屋を案内してくれると屋敷の奥へと消えて行った。
戸を叩く、しかし返答はない。……ん?とゆっくり戸を開けば杏寿郎は目を閉じていた。

「あ、寝てたのか……」

左目に巻かれた包帯。すー、と寝息を立てて寝ている杏寿郎。いつもなら人の気配が近づいて来た時点で起きるのに、と顔を覗く。
小さい頃から一緒の杏寿郎、すっかり顔立ちは青年となってしまった。

「杏寿郎」

髪の毛に手を触れる、少し癖のある杏寿郎の髪の毛。しかしふんわりと気持ちの良い感触だ。

「またね杏寿郎」

軽く髪の毛を撫でて部屋を出る、寝ている人を起こす程酷ではないし、そもそも任務を言い渡されているから行かなければならない。


***

気配が無くなった、止めていた息を吐く。あんな優しげな声を記憶上聞いた事が無い、それが俺に向けられている。
ふわりと撫でられる感触、梨沙の香り。俺と違って任務に忙しいであろうその身なのに態々顔を見に来てくれた。
顔が熱い、炎を目前にしたときよりも熱い気がする。

「……よもや」

梨沙が触れた自らの髪の毛をわしゃり、と掴み短い息を吐いた。



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