あれから任務をぶっ続けで入れられ、体が疲弊していた。
寝たい!すごく寝たい!1日を寝て過ごしたい!がそれも暫くは叶いそうに無い。
今日は杏寿郎が蝶屋敷を出る日、1人で大丈夫とは言っていたが気になるものは気になる。

「おはよう!ございます!」
「……汚いですよ!梨沙さん!」
「ごめんアオイちゃん……任務終わりで直行してきた……」

羽織は汚れ、頭もぼさついているだろう。隊服も砂埃がすごいしこのまま蝶屋敷に入るのは躊躇われるくらいだ。

「煉獄さんのお迎えでしょうか?」
「いいって言われたけど気になっちゃって」
「今は準備していると思いますので、梨沙さんはお風呂に入って来てくださいね」

玄関先で話しているとしのぶが奥からやってきた。まぁそうなるよねとある程度玄関で砂埃を叩き「洗濯しちゃいます!」と手を伸ばして来たアオイちゃんに羽織を渡した。隊服も洗ってしまいたいくらいだ。

「もしかして私が一番手が掛かってない?」
「あら、今自覚したんですか?骨も完治していないのに」
「アッ、いやそれは……ごめんなさい」

ふふ、と一見やさしげな笑みを浮かべるしのぶの額には青筋が出ていた。しのぶは怖い。

先に髪、体を洗い湯船に浸かる。薬湯になっているらしく全身の擦り傷にとても染みる、痛い。軽く痛い。
風呂から上がると隊服の汚れが軽く落ちていた、アオイちゃんだろうか、気が利くものだ。上の隊服も洗ってもらおうと動き回っていたら洗濯していたアオイちゃんを見つけた。

「アオイちゃん」
「髪濡れたままですよ、梨沙さん」
「いいのあとで乾くから。それと砂埃払ってくれた?ありがとう」
「洗った方がいいのですが、着るものが無くなってしまうので」
「下は仕方ないけど、上の隊服洗ってもらっても良いかな……とりあえずシャツで過ごすからさ」
「分かりました、そちらに置いておいてください。……梨沙さん、羽織の血汚れが落ちないのですがいつから付いていたのですか?」
「………2ヶ月とか……」
「貴方は馬鹿ですか!もう!多分残りますからね!」

ぷんぷん怒るアオイちゃんにごめんね……と謝る。それでも精一杯落とそうと頑張る姿には涙が出る。アオイちゃんが居なかったら色々と大変だった、色々と。

「杏寿郎」
「む!梨沙か!任務ではなかったのか?」
「杏寿郎が蝶屋敷から出るんだよ?大慌てで戻って来たよ、おかげで羽織と隊服は今アオイちゃんが洗ってくれてる」

部屋を覗けばベットに腰掛けている杏寿郎と目が合った。右手をぐっぱ、と握って開いてを繰り返していてそういう地道な動きの確認も怠らないんだなぁ、と視線を手から顔に戻した。

「梨沙、来てくれて有り難う。実を言うと1人は心細かったんだ」
「だってもし逆だとしてもこうするでしょ?」
「ハハハ、それもそうだな!」

ふ、と気づく違和感。笑っていた杏寿郎は「ん?」とこちらを見るが違和感の正体にたどり着けない。

「なんか、いつもと違う?杏寿郎」
「いつもか……左目は見えないし左腕は無いぞ」
「私の心を抉る言葉はやめてくれ」
「すまんすまん、そうだな……髪を結べないんだ」

腑に落ちた、軽く結んでいる髪の毛が下に垂れていた。
それもそうか、1人でもう結べなくなってしまった。

「杏寿郎、結ぼうか」
「いいのか?」
「むしろさせて」

杏寿郎から紐を受け取る、横向きに座り直した杏寿郎の背中側へと体を動かす。
ふわりとした髪の毛に指を入れる。髪を纏め軽く引っ張る。「痛く無い?」と声をかければ「問題ない!」と元気な声、満点花丸だ。

「うん、いい男になったよ」
「………梨沙、そう言う事は、あまり言ってくれるな!」
「えっ、悪い事だったの?」
「逆だ!だが、俺が恥ずかしいだろう!」
「……杏寿郎も恥ずかしがるんか!!!!」
「当たり前だろう!」

はー、と額に手を当てる杏寿郎を見るとほんのり顔色が赤い。それを見てぽぽぽ、と自分の頬にも熱が集まるのが分かる、思い切り頬を引っ張って気をそらす。

「えーと、そういえばいつ頃ここ発つ予定?」
「昼餉を食した後に行こうかと考えていたが、梨沙は任務等は大丈夫か?」
「休暇もぎ取った!そのかわりちょっとほぼ徹夜してる!」
「だからか、目の下に隈が出来ているぞ」

すり、と杏寿郎の指が私の目の下を撫でる。ひく、と喉が動く、今迄こんなの普通にしてたし慣れている筈なのに、なにか違う。

「ね、ね、ねる!ひるねする!昼餉の時迄寝かせて!」

飛び退く様に隣の空きベットへと転がり込む、頭迄布団を被れば杏寿郎の笑い声が聞こえた。



TOP