ぎし、と言う音で意識が浮上する。しかし圧倒的な眠気に襲われて再び意識は落ちる、私の背中側に何か当たった気がした。

「おはようございます、梨沙さん。煉獄さん、もうお昼ですよ」
「よもや!寝すぎたな!」
「………う″ん」
「……もしかして梨沙さん寝起きあまり良くありません?」
「予想の通りだ!」

しのぶの声が聞こえたと思えば、頭の上から杏寿郎の声が聞こえた。薄く目を開けばしのぶの羽織が目に入る、まだ寝ててもいいんじゃないかとしのぶから逃げる様に寝返りを打った。

「あらあら、仲睦まじいのは良いですが煉獄さんは昼餉を食べてくださいね。梨沙さんはお昼いかがしますか?」
「……ちょっと……」
「握り飯でも握ってやってくれないか?」
「それだけでいいんですか?」
「こうなると食よりも睡眠なんだ、梨沙は」

私の上でなんか会話が聞こえる、寝返りを打った先は落ち着く香りがする。すん、と香りを嗅げば薬品の香りも混じっていた。

「ではお持ちしますね、ああそれと。梨沙さんの隊服の上は乾いたみたいなのでこちらに置いておきますね。羽織はアオイが頑張っていた様なので明日に引き取りに来てくださいと」
「うむ、分かった。伝えておこう」

閉じた瞼越しに感じていた影が退く、ぎしと音がなり眩しい光が瞼越しに目へと入って来た。

「……マブシイ」
「起きろ梨沙、うっかり俺も寝てしまったのだが」

ぱちり、と目を開く。杏寿郎が寝てた?顔だけを上げて杏寿郎の顔を見ると左頬が軽く赤くなっていた、まるで左側を下にして寝ていた様に。

「……杏寿郎寝てた?え?ここで?」
「うむ!」

体を起こして私が寝ていたベットを指差せば快活な笑みが返って来た、ああそうかー!添い寝パターンね!心がしんどい!
ばたーんと倒れる様に再びベットへと横になる。なんでだ、今迄添い寝とか普通に出来てたじゃん、昼寝してた杏寿郎見たらくっついて寝てたじゃん、暖かいからさ。なんで今更、恥ずかしがってんの!照れてんの!可笑しい!好きだと自覚した途端コレですか!
ばちん、と頬を叩いて体を起こす。目の前に居る杏寿郎は身なりを軽く整えていた。

「ごちそうさまでした」

パチン、と両手を合わせる杏寿郎。それと同時にぺろりと指に付いたご飯粒を私は食べた。
おしぼりで手を拭いて傍らに置いてあった隊服の上に袖を通した、ちょっと体温が上がっていて暑いので前は締めずにいた。

「ではお気をつけてくださいね」
「うむ!世話になったぞ!」
「またご飯食べに来るよ!」
「あまり洗濯ものを増やさないでくださいね!」

玄関でしのぶとアオイちゃんが見送ってくれた。
杏寿郎は着流しを着て上に隊服から羽織っていた炎柄の羽織を掛けていた。もちろん帯刀はしている。
私はその他の荷物を持っている。出る間際迄荷物を持つ持たないで揉めたが私の勝利。

「杏寿郎」
「ん?」
「手!」

私の手を上にして杏寿郎の手を差し出すように声をかける。素直に従った杏寿郎は私の手の上に自分の手を乗せる。そのまま私は杏寿郎の手をそのまま握り歩き始めた。

「む、梨沙……」
「任せて槇寿郎さんに殴られそうになったら私が殴るから」
「そういう事ではない!そして父上を殴るな!……手、いいのか?」
「私がしたいからいいの」

ふん、と杏寿郎を見れば「そうか」と酷く優しい笑みを浮かべていた。
気のせいかもしれないんだけど、眼帯になってからすごく男前度が上がった気がする、狡いなぁ。



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