「んっ、う……もう休みたい……っ、あ」
「何だよ。体力無えな」
 てめえが体力ありすぎるんだよ! 何時間ヤってると思ってんだ! そう言い返してやりたかったが、ぐっと性器を奥に押し込まれてしまえば文句の代わりに喘ぎ声が漏れる。
 明日は休みだからいつまでも起きていられるとは言え、流石に眠たい。だってもう夜中の三時だ。確かに俺だって最初は乗り気だったけど――というより俺が誘ったようなもんだけど――まさか耐久セックスになるとは思わないじゃん!
 疲れきっている俺とは違って、千歳は何だか余裕そうだ。ふっかふかのベッドに倒れ込んでいる俺を見下ろして、ゆっくりと腰を押し進めるこいつに殺意すら芽生える。もうやだって言ってんのに。声を出すのも怠くて何度もふるふると首を振っていれば、それを見た千歳はくつりと喉を鳴らした。
「寝る気だった俺をその気にさせたのはお前だろ。責任取れよ」
「あっ……だって、おまえが、あんっ……ン、」
「なに?」
「さ、さいきん、キスすら、してくれない、から、あ……んんっ」
 そうだ。こんなことになったのも、元はと言えば千歳のせいだった。普段は頼んでもないのに不意打ちでキスとかしてくるくせに、ここ最近は何故かそれが無くて、こいつの部屋に行っても俺に触れることなく真っ直ぐベッドに入ってしまうから、まあ、ぶっちゃけてしまえば不安だったのだ。
 だって今まではしつこいくらい俺に触れてきていたのに、突然それが無くなったのだ。不安になるのは当たり前だと思う。俺のこと嫌いになったのかな、とか、他に好きな奴見つけたのかな、とかぐるぐると考えてしまうのも仕方がない。うん。
 それで今日の夜試しに誘いをかけてみたら、こんなことになってたと言うわけだ。意味が分からない。
「キスしてもらえなくて不安だったわけだ?」
「っ……うっせえ、ん、あぅっ……」
「ふうん」
 冷たくあしらったつもりだったのに、千歳はそんなこと気にも留めずににやついている。むかつく。殴りたい。そう思って力の入らない腕を無理矢理伸ばせば、その腕は千歳に掴まれて――手のひらをべろりと舐められた。な、なっ……!
「そんな心配すんなよ。お前に飽きることなんてねえから」
「ばっ……心配なんかしてな――っん、む……!」
 そして、キス。千歳は俺に覆い被さってちゅ、ちゅ、と何度も繰り返し軽いキスを俺の唇に落とす。
 あー、むかつく! どうせ俺の反応が見たくて敢えて俺に触れてこなかったんだろう千歳も、怒っていいはずなのにこんなので簡単に絆されちゃう俺もむかつく!
 俺も今度やり返してやろうかな。そしたらこいつ、どんな反応するかな。なんて、そう思ったけど、それよりも今はただ千歳ともっと深いキスがしたくて、俺は千歳の舌を受け入れるために口を開けた。

木津さん宅、「誤算、伝染中」より涼くんと千歳くんの話を書かせていただきました。
本編は涼くん総受けですが、どのCPもとってもとっても可愛いのでぜひサイトに飛んで読んでみてください。ファンになること間違いなし! です!


ALICE+