今寝てたところなの


プリンアラモード

かたかたかた、かたん。
馬車がゆっくりと止まり、外からタム川のものと思しき水流の音が聞こえた。
「皆様、もうすぐギンキョウでございますが、その前にタム川の傍にございますカフェ・テガミーシャにて休憩いたします。どうぞお寛ぎください」
御者はそう言うと馬車の扉を開き、討伐隊のメンバーをテガミーシャへと案内した。
開放的なテラス席は談笑する家族連れで賑わっている。
テガミーシャの外観は、茶色い枠に白の扉をはめる形のツートーンで綺麗にまとまっており、店内には木調の机や椅子が並んでいた。
まるでカフェの入り口であるかのように少し開いた白の引き戸が、故郷の自宅の障子戸にどこか似ていて...僕は親父のことをふと思い出した。
「いらっしゃいませ、今日はようこそお越しくださいました。貸切でございますのでお好きな席にお座りください」
テガミーシャのオーナーの女性は微笑みながら、みんなを案内している。
僕が何となく窓際の4人テーブルに座ると、後から入ってきた姐さんとチコちゃんが反対側に座ってきた。
「まんまるの照明がオリーブみたいで可愛いねー♪」
「お?そういやアヒージョに明太子ぶちこむとうまいよ」
「えー!?」
「そうなんや、今度奢ってね」
アヒージョがどういう料理だったか思い出せないが、姐さんが言うのだから美味しいのだろう。
「10億くれたら奢ってやるよ」
「あ はい」
適当に流し、話題を変える。
「ここの店は何が美味しいんやろか」
「季節限定メニューがあるよー?わたしはプリンアラモードにする!」
「プリンアラモード?ハイカラやね」
と、ふと人の気配を感じて横を見るといつの間にか隣にアキちゃんが座っていた。
「僕もプリンアラモードにします」
「お、アキちゃんや。じゃあ僕も」
「注文お願いしまーす」
姐さんがスタッフを呼ぶ。
「飲み物も決めた?」
「わたしはホットコーヒー!」
「ん、私も」
「僕はアイスのコーヒーで」
「ほうじ茶ミルクをひとつお願いします」
「ホットコーヒーおふたつとアイスコーヒーがおひとつ、ほうじ茶ミルクをおひとつですね。他にございますか?」
「プリンアラモード4つお願いします」
「プリンアラモードを4つ。以上で?」
「ええな?」
「ええよ」
チコちゃんとアキちゃんは黙って頷いた。

…しばらくすると僕たちの席に4人分のプリンアラモードと飲み物が届いた。
モンブランが載ったカスタードプリンを囲うように、バニラアイスと季節のフルーツが並んでいる。
「イチジク、久しぶりに見ました」
アキちゃんはそう言って目を輝かせながらほうじ茶ミルクをストローで啜った。
「硬めのプリンだぁ!美味しいー!モンブランもー!」
「昔は生クリームが高級品でな...プリンは硬めが多かったんや」
「そうなんですか、じゃあ昔はショートケーキも高級品だったんですね」
「うむ」
チコちゃんはミルクを入れたコーヒーをかき混ぜながら、何に対して笑っているのだろうか…けらけら笑っている。
甘いものを食べている時の女の子は可愛いものだ。
少し離れた席を見ると、討伐隊の1人がビールを飲んでいた。
ありゃ、日がまだ明るいうちだけど僕もビールにしたら良かったかな。
いや、昨日も飲んだし…いいか...
僕はブラックのアイスコーヒーを口に含み、少し渋い顔をした。
旅は、終わりに近付いていた。