◎アニメ24話ネタ。円堂監督と聖帝の直接対決後のお話。夢主はフィフスセクターに仕えてます
◎ネタバレ要素満載。要注意。



先程からどこか遠くを見つめているこのお方。それは何かを懐かしむようにも見えるし、物思いに耽っているようにも見える。

今日、とある男が彼を訪ねてきたというのは私も部下から耳にしている。それを聞いて思ったわ。きっと彼がやってきたのねって。そろそろその時が来ると私も覚悟はしていたわ。


「……イシド様」


そんなことを思っていたら私は自分でも気づかぬうちに目の前にいる方の名前を口に出してしまった。もちろん、その方はハッと我に返った様子で此方を向く。
何かを抱え込んだ貴方を見ていたら此方まで苦しくなってきて。またいつものように放っておけない気持ちになって。だからきっと無意識のうちに貴方の名前を発してしまったと思うの。
だけど実際は特に用なんてない。やだ、私ったら。何かを考えていたご様子だったのに邪魔してしまうなんて…。こんなのイシド様に失礼だわ。

そのまま口ごもっていると察して下さったのか、彼はほんの一瞬自嘲の笑みを浮かべ、直後いつもの表情に戻り、一言こう言った。


「先程、円堂守が来た」
「……やはり、そうでしたか」


それから先の会話は続かない。今度は私が遠くを見つめ始めたからだ。その男やその周りの人物。そんな人達との思い出。それから先の出来事。様々なことが走馬灯のように蘇ってくる。
同時に、何とも言えない気持ちになった。
きっと仲間とのかけがえのない日々がある反面、彼が心に堅く誓ったことと堅く誓わせた原因、相対するものがあるからだと思う。
私はもう一度彼を見つめた。彼も私と同じように切ない顔をしていた。昔のことを思い出して何とも言えない気持ちになるのは彼も同じなのだろう。


「………なまえ……」


偽名ではなく久々に呼ばれた本当の名前。その名を呼ぶ時、彼は僅かな時間「イシドシュウジ」ではなくなる。この瞬間に私がここにいる1番の理由があるのだ。

私はゆっくりと彼に近づき、そっとその身体を抱き締めた。そのままいつもは大きいのに今はやけに小さく感じる背中を優しい手つきで撫でていく。


「大丈夫だよ」


私はずっと傍にいる。
そう囁けば自分からぎゅっと私を抱き寄せる彼。そのままそっと涙を流す。
その姿はまるで不安に押し潰されそうな小さな子供。部下や上の者には決して見せてはいけない本来の彼の一部分。私だけが知る彼の弱さ。その姿を見せれるために、その場所を作るために、私はここにいる。だからあの日彼についていき、そして私もあの人の僕となった。
そうすればいつでも1番近くで支えてあげられるでしょ?毎日必死にボールを追った若き頃の私達のように。



暮 れ ぬ 愛



大丈夫、この革命はきっと成功する。立場は真逆だけれどみんなも居てくれるもの。

だからまたいつの日か子供達があの頃のサッカーが出来る日まで、貴方がサッカーでの地位を全て投げ捨ててでも愛するものを守ろうとしたように、私だって全てを賭けて貴方を守るわ。貴方が堅く決心した時からその覚悟はとっくに出来てる。

これから先もこの思いが揺らぐことは決してない。



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ゲームクリア後からずっと書きたかったネタ。
ゲームでもアニメでもこのシーン大好きで…!っていうかもう聖帝が好きすぎてツラァ…!
イシドシュウジとして振る舞い続けていてもこんなことがあったら精神的にこたえるんじゃないかなと思いながら書いたらすらすら書けた。きっとこれは私の本気の願望なのでしょう。笑
ちなみに中学の頃から付き合ってるという裏設定があったりする。
実はこの2人でずっとやってみたい連載があるんだよなぁ…!今は時間がないので無理ですがいつかやってみたいです