◎R-15



























「……虎丸くん、ちょっと近いかな」
「あれ?わざとなんですけど」


直球すぎる言葉に顔を真っ赤に染め上げれば、彼はさらに私を壁に追いやった。かろうじて距離を作ろうと抵抗するように身を捩れば逃がさないとばかりに腰に片腕が巻き付いてくる。それは細いようでいて実はものすごい力を秘めていること、そしてそれから逃れる術を私は知らないことは百も承知だ。今までの経験の中で成長しているのは虎丸くんだけじゃないんだから。残念ながら彼とは違ってまだ対策までは浮かんでこないのが私の最大の難点なんだけれども。そんなことを思いながら私は大人しく虎丸くんに身体を預けた。


「珍しいですね」
「抵抗するのは無意味、でしょ」
「正解」


やっと学習しましたか。そんな皮肉めいたことを言いながら彼は私の唇に食らいついた。年下のくせにほんとに生意気な子。勝ち気なところは子供の頃から変わっていないようだ。


「…なまえさん、可愛い」
「……うる、さい…っ」
「…まだ余裕があるみたいですね」


だけどその方がオレ、燃えます。
変態かなんてツッコミは熱い吐息と一緒に食べられてしまった。そのまま深く深く舌を絡ませられる。そうすると先程までとは一変、一気に私は余裕がなくなるのだ。だんだん息苦しくなってくる。ああどうしよう、涙で視界がぼやけてきた。虎丸くんがどう反応してくるかなんて分かっているのに彼の背中を叩かずにはいられない。そうして必死にアピールしているにもかかわらず、彼は私の腰をさらにぐっと引き寄せるのだ。隙間もないくらいぴたっとくっついた2人の身体。程よく筋肉のついたたくましい腕や胸板を全身で感じ、最早酸欠だからか窮屈だからか彼から放たれるとてつもない色気にやられてしまったからか、明確な理由もわからずただひたすらくらくらしていた。
ようやく唇が離れた頃には私は自力で立つことなんて出来なくて。そうなることを読んでいたかのように虎丸くんの片膝はすでに私の足の間に滑り込んでいて。


「…とらまる、くんの、いじわる」
「なんのことですか?」
「も、やだあ…」
「で、このあとはどうするの?なまえ」


答えなんか分かってる癖に、このドSめ。確信のあるその笑みがにくったらしくて仕方ない。だけど身体はその先の刺激を求めていて、頭の中はずっとふわふわしていて。あんなにいやだと思っていたのに正常な判断なんか出来やしない。そうして私は今日もまた彼の戦略にまんまと填まり、耳元で甘くて刺激的なおねだりをすることになるのだ。