何でだろう、さっきからずっと視線を感じる。今、この部屋にいるのはあたしと隣にいる幼なじみの幸次郎だけ。つまりこの視線は彼のものだ。


「ねぇ、勉強しないの?」


大事なテスト近いんだよ?そう言ったのに返ってきたのはんーという曖昧な返事だけ。こいつ、わかってんのかコラ。あたしを見てたってテストの点は上がらないんだからね。


「……なまえ」
「なによ、あたしは忙し…っ」


急に言葉を続けるのが困難になった。それどころか、呼吸するのも儘ならない。何これ、何で幸次郎はこんなに近くにいるの?「こ、幸次郎離れてよ」「ごめん、むり」いやいや無理じゃないでしょ無理じゃ。無理なのはあたしの方だ…!


「なまえ、」


ただでさえ近い距離を一気に縮められた。どきん、一気に心拍数が上がったのがわかる。こいつ無駄に顔だけはいいからな。…って違う、あたしたち別にそんな関係じゃない。だからその、き、キスとかしちゃ駄目だって!
ぎゅっと目を瞑ればその分敏感になる触覚。すぐ近くから幸次郎の息遣いを感じた。え、この人本気なの?あたしたちほんとにちゅーしちゃうの?ああもうわけわかんない、駄目だよ無理だよどうしよう…!






「…なーんてな」
「……へ?」
「勉強飽きたからなまえで遊んでみた」
「は?」
「ちょっとした息抜きってところか?」


なに、期待しちゃった?
意地悪く笑ったアイツにとりあえず持ってたシャーペンを投げつけた。
最悪。あたしのときめきを返せばか野郎!



イケナイコトガシタイ
(そういうお年頃なんです。)