◎名前変換なし



「さっきからどうした?」
「ううん、やっぱり綺麗ね」
「……見すぎじゃないか?」
「減るもんじゃないわよ」


大好きな彼の隣に座ってから特に何かを話す訳でもなく。代わりと言ったらアレだけど、私は濁りのない貴方のエメラルドの瞳をただひたすら見つめるの。


「全く、君は本当に面白いね」
「あら、褒めてるのかしら」
「勿論」


こんな変哲もない目を綺麗だなんて言ってくれるなんて、俺は幸せさ。彼はそう言ってクスクスと笑う。何がおかしいのかしら。至って真面目な話をしていた私は首を傾げるばかり。
だってこの綺麗な瞳が彼の一部であり、彼をつくり出しているんだって考えると愛しくて仕方ないんだもの。(もちろん、愛しいのはその持ち主の彼もだけどね。)美しいものや素敵なものをずっと見ていたくなるのは人間の性じゃなくて?

私はマークの膝の上に移動して今度は少し上から2つの緑を見つめ直す。嗚呼、やっぱり綺麗。変哲もないなんてとんでもない。明るくて濃いそれはまるで本物の宝石みたいじゃない。その辺にいる人がそう易々とこの綺麗なエメラルドを持ち合わせている訳じゃないわ。


「もったいない。自覚がないなんて」


唇を尖らせてちょっといじけた声を出す私。だってなんだか悔しいじゃない。それなのに、彼ったら優しく微笑んでこんなこと言うんだもの。


「俺は君の瞳が好きだけどな」
「……ただの黒い目よ?」
「愛する君の瞳だからいいのさ」


ああ、彼も同じことを考えていたのね。今さらながらなんだか照れくさくなっちゃった。

ふと絡み合った視線。先程のように意識的なものではなく、もっと自然なもの。比べものにならないくらい2人と取り囲む空気は甘くなる。
お互い好きな瞳に自分が映っている。こんなに幸せなことってあるのかしら。


「マーク、大好きよ」


自然と口から出た言葉。彼はまた優しく微笑む。そんな彼に一段と愛しさが込み上げてきて、私は両手をマークの頬に添えそのまま目蓋に小さなキスを落とした。


星 の 瞳 に
貴方の瞳は幸せを運ぶ魔法の瞳よ