小さいころからわたしは引っ込み思案だった。おままごとをしているおんなのこの輪に入りたくてもなんて声をかけてよいのかわからず、教室の隅でそっと見つめているような子だった。おとこのこから話しかけられたらそれだけでびっくりして泣きじゃくる、弱虫で泣き虫な子だった。そんなわたしをいつもそっと支えて、守ってくれたのはいっちゃんだった。

いっちゃんこと松川一静くん。彼はわたしのお兄ちゃん的存在だ。同い年なのにすごく頼もしくて、気づけばわたしはいつも彼の後を追っていた。



小学校に上がる頃には少しずつ、周りに心を開くようになっていた。何度かあったクラス替えでも、はじめのうちはなかなか全体に馴染めず苦しかったけど時間が経つにつれて仲の良い友人ができ、以前のように一人でいるということは随分と減った。それもこれも、いっちゃんのおかげだ。いっちゃんがいつもちょっとしたきっかけをくれたから、いっちゃんがいつもそっとわたしに気を配ってくれたから。緊張の量が減ったおかげで壁を作ることがなくなり、少しずつ周りと関わる術を覚えていったのだ。

そんないっちゃんとは6年間、奇跡的に同じクラスだった。小学校最大の行事、修学旅行でも同じグループになって一緒にいっぱい写真を撮った。席替えのときもくじに細工したわけではないのにお隣になることもしばしばあり、わたしはいっちゃんに頼りっぱなしな日々を過ごしていた。なまえちゃんと松川くんはなかよし兄妹だね。友達にからかわれるように言われたこの言葉はわたしにとっては最高の褒め言葉だった。



中学でわたしたちは初めてクラスが別れた。幼稚園から数えて10年目の出来事だった。始めはショックを受けたけれど、考えてみれば今までが奇跡的すぎただけで、いつかクラスが別れるのは当たり前のことだった。いっちゃんの隣が居心地よすぎて忘れていたひとつの事実だった。そんなわたしの気持ちを見透かすかのように、いっちゃんは「クラスが別れても俺らの仲は変わらないよ」と頭を撫でながらやさしく微笑んでくれた。それはいつも以上にいっちゃんの温かさに触れた瞬間だった。

あの日のいっちゃんの優しさは、その後のわたしに大きな勇気を与えた。あんなに引っ込み思案で大丈夫かと周りに心配されていたわたしが、自発的に話しかけていくことで新しい友人を作ることに成功したのだ。それはいっちゃんにとっても嬉しい出来事だったようで、報告したときは自分のことのように喜んでくれた。もちろんわたしも自身の確かな成長を感じて、ちょっとだけ誇らしい気持ちになれたのだった。

一方、いっちゃんは中学に上がってからバレーボールを始めた。もともと背は高かったから向いていたのだろう、状況は全く違ったが、みるみる成長していく自分に喜びを感じているのは彼も同じだった。


きっかけは確か、そんな彼の一言だったと思う。帰宅部で放課後は暇人だったわたしにちょっとでいいから練習を見てほしいと、終わったらちゃんと送るからと、そんなようなことを言われた気がする。バレーのルールは全然知らなかったし一人で見るのは心細かったけれど、それ以上に彼の生き生きとした姿は見入るものがあった。いつの日か、授業後ダッシュで体育館に赴くことがわたしの日課となるほどに。
そうしてまたバレー部の練習風景を見終え、昇降口でいっちゃんを待っていたある日のことだった。

あれ、また松川待ってんの?
知らない声が後ろから聞こえた。振り返ると見覚えのある男子が数人。はて、どこで会ったんだろう。…そうだ。男子バレー部の、いっちゃんの先輩だ。小さく頭を下げると、彼らはにやりと、いやらしい笑みを浮かべた。そして驚いたことに、唐突に背筋が凍るような質問を投げかけてきたのだ。

なあなあ、松川といつから付き合ってんの?
意味が全くわからない。わたしが固まりながら小さく否定の言葉をこぼしていると、先輩そこまでです、とタイミングよくいつも以上に落ち着いた声色でいっちゃんの制止が入った。なまえ、帰ろう。いっちゃんが優しく手をとりわたしを立ち上がらせると、また先輩から、松川、王子サマかよ、なんてからかう声が飛んできた。いっちゃんは軽く先輩を流していたけれど、わたしはどこか気まずくて、そして何よりからかわれたことが嫌でたまらなかった。

それで終わればきっとどうにかなったんだ。ちょこっと気持ちの面で成長したわたしでも対処できたんだ。でも、現実は少し残酷だった。あの日を境に先輩からの揶揄は日に日にエスカレートしていった。小学校でもイチャイチャしてたの?修学旅行もデートしてたらしいじゃん。そもそも幼稚園からそういう仲だったとか?ちなみにお二人さんは中1にしてどこまでススんだの?時にはあまりに度が過ぎるものもあって、耳を塞いでしまいたくなることもあった。
そんなとき、いっちゃんはいつもやんわりと話をそらしてくれてわたしを守ってくれた。嫌なのはいっちゃんも同じはずなのに、苦しくて泣きたいはずなのに、彼は決して弱音を吐かなかった。昔から変わらないその強さが心強かったのと同時に、結局また自分はなにもできないことが腹ただしかった。精神的に強くなったはずなのに、どうしてわたしはまだ守られる側にいるのだろう。
そうしていっちゃんに対してどうしようもなく申し訳ない思いでいっぱいになっていたある日、ぐらついていた精神がついにバランスを崩した。


大丈夫か?
藍色に染まる帰り道。隣には頭2つ分高いいっちゃんの存在。わたしの様子がおかしいと感じた彼は、わざわざわたしの目線に合わせて屈んでくれた。本当に、いっちゃんはどこまでも優しい。こんなに嫌な思いをしてるのに、まだわたしと帰ってくれるなんて。そしてその優しさを与えてもらう度、こんなにも胸が苦しくなるなんて。ああ、なんでこんなことになってしまったのだろう。

果たして、このままでいいのか。これから先もいっちゃんはわたしの代わりに嫌な思いを受け止め続けるのか。
耐えられなかった。それはわたしが不安に押しつぶされた瞬間だった。そうして思わず口をついた言葉は、わたしにとっても彼にとってもあまりに残酷なものだった。

「ねえいっちゃん」
「ん、どうした?」
「…もう、体育館いかないから」
「…え?」
「だからいっちゃんも、もうわたしに関わらないで」

中学1年生、風が冷たくなり始めた秋のことだった。


もちろん、いっちゃんはわたしに何故そこまでするのと問いかけた。いつもおだやか一択の表情からめずらしく焦りと悲しみが垣間見えていたのも憶えている。でも、そのことに気付きながらもわたしは彼の負担を減らすことに必死で、彼の話を聞く余裕は持ち合わせていなかった。だから適当にはぐらかしてしまった。誤解を招かないよう言っておくと、わたしはただ、とにかくこの状況を変えたかっただけなのだ。これ以上いっちゃんに嫌な思いをしてほしくなかっただけなのだ。でも、冷静になってみればすごく自分勝手な話だとも思う。せめてもっといい言い方はできなかったのかと、その日の夜自室のベット上で自分の不器用さを呪ったのも確かだった。

それから2年近くは全く関わりがなかった。廊下ですれ違っても互いに目を反らすようになった。さみしい気持ちもあったけど、もう昔とは違う。環境が変わった今、いっちゃんと接し方を変える必要があったのだと自分に言い聞かせた。



高校は別れた。彼がどのような進路を歩んだのかすら知らなかった。完全にいっちゃん離れしたわたしは多少引っ込み思案な部分は残っていたけれども、それでも以前とは比べものにならないくらいはっちゃけるようになった。ちょっとした揶揄を交わせる余裕も生まれていた。有難いことにそういった気さくさがいいと友人に好かれ、時には男の子とオツキアイすることだってあった。人生の最盛期かもしれないと疑うくらい、華やかな毎日だった。

でもなぜか、胸の奥の方でぽっかりと空いた感覚がわたしの中を長い間占領していた。そしてそれは、とうとう卒業しても拭うことはできなかったのだ。









騙された。わたしは瞬時に判断した。何がサークルの飲みだ。こんなの完全に合コンの人数合わせに使われただけじゃないか。わたしを誘った張本人にじとっとした視線を送る。が、生憎彼女は主催者なのだろう、わたしの視線に気づくことなく奥で忙しなく動いていた。

アルコールが解禁された歳になってから大勢の人と話す機会が確実に増えた。と、同時にときに様々な意味で生々しい話になることも増えた。それはオトナ特有の話題も含まれていて、そういった雰囲気が苦手だったわたしには苦痛以外の何物でもなかった。
だから合コンはずっと断っていたのにこんな形で嵌められるなんて。まさかの事態から初参加となってしまった今、わたしにできることは隅っこでそっとしていることくらいだろう。いい頃合いになったらそのままフケてしまえばいい。ああ、時間よ早くすぎてくれ。そう思い、極力目立たないよう一番端っこの席で適当にやり過ごしていた。

変化は突然訪れた。


「お、着いたか!」


わたしから一番離れた席にいた、大柄な男の人が立ち上がった。全員の視線が一斉に集まっていく。もちろん私も例外ではなく、甘い炭酸を口に含みながらそっと入り口の方へ目を向けた。


「おせーよ!待ってたんだぜ」
「悪い、思ったよりバイト延びたんだよ」


どこか懐かしい声色。でも、直接その声を聞いたことはない。初めて味わう不思議な感覚。これは一体なんだろう。
そうしてその感覚から解き放たれた頃、今度は自分の目を疑うこととなる。

今まで全く連絡をとっていなかったのに、こんな小さな店の同じ席でまさか会う訳がない。どれだけ低い確率だと自分の目を嘲笑った。しかし直後、彼の口から紡がれた言葉により、わたしのまさかは簡単に打ち消されることになる。


「ほら松川、自己紹介!」
「ああ。…遅れてすみません、松川一静です」




そうか、あれは既視感と似てたのかもしれない。対角線の向こう側にいる彼を見つめながらふと思った。おつまみ片手に周りと語り合うその笑顔は昔と何ら変わりない。あったかくて、すべてを包み込むようなやさしいもの。少しだけお酒が入っているのだろうか、赤くなった頬は年相応の色香を醸し出していた。ほら、君の隣にいる女の子がうっとりするような目で見てるよ?チャンスなんじゃないの、ちゃんと気づいてるかな。
胸のあたりがもやもやするのは、きっとアルコールが回りはじめたからだろう。ああ、無意識のうちに結構飲んでいたみたい。わたしの周りには空になったグラスが山のようにあった(はじっこだから、ほかの人の分も寄せられてるんだろうけども)。予定より随分長居してたようだ。今日、ちゃんと帰れるかな。明日バイトなくてよかった。

じゃあ、そろそろお開きで。この合図と共にみんな席を立っていく。中には途中でお持ち帰りされた子もいるのだろう、最初より人数は明らかに減っていた。わたしも人の流れに任せて席を立ってみたはいいものの、いけない、どうやら思った以上に酔いが回っているようだ。大丈夫?って声をかけてくれたのが女友達じゃなかったら、危なかったかもしれない。意識が飛んでないのが救いだ。はてさて、どうやって家まで帰ろうか。


「ねえ、タクシー呼んだからおいで?」


ぐい、急に手を引かれわたしはその人の前に立った。力はそんなに強くなかったと思うけど、ちょっとおぼつかない足では引かれるがままになってしまう。だから相手が彼だったとしても、わたしは拒否することができなかったのだ。頭の回転が鈍くなってるから、とりあえず知ってる人に甘えさせてもらったんだ。そう、ただそれだけの話だ。思い出話に浸りたいとか互いの知らない時期を探り合おうとか、そんな深い意味なんていうものは、何もない。


手は相変わらずつないだまま、荷物を全部持ってもらい店を出た。大きくてごつごつした、男の人の手。所々に豆のような固いものがある。きっとわたしの知らない間にも、あの頃から大好きだったバレーに青春をかけていたのだろう。そういえば、すごく背伸びたね。ヒールを履いてるわたしと何センチくらい差があるのかな。ぐんぐん前を行く広い背中も、もうわたしの知ってるものじゃない。やはり君はもう、変わってしまったのかな。
無性にさみしみ思いがこみ上げて、わたしは必死に意識をそらすように彼に話を振る。


「ねえ、結構歩いたよね。タクシーどこにくるの?」
「………来ない」
「…え?」
「タクシー、本当は呼んでないんだ」


ピタリと止まった足。バツが悪そうに彼が振り返る。まさかの出来事で少しだけ頭がクリアになり、わたしはそのままどういうこと?と尋ねた。


「誰かがお持ち帰りする前に俺がお持ち帰りしたの。適当な理由つけて。…なまえ、飲みすぎて危なっかしかったから」


久々に名前を呼ばれ、ドキンと胸が高鳴った。が、それに浸ることもなく、すぐにたくさん浮かび上がってきた疑問をぶつけていく。昔より強気になったであろうわたしに、果たして君はどんな反応をするのだろうか。


「隣にいた可愛い子はどうしたの?」
「スルー。そしたら脈なしって気づいたらしくてさっさと他のやつのところにいった」
「なんで?だって合コンだよ?彼女ほしかったんでしょ?」
「合コンなんて、3日間飯奢ってもらう約束で人数合わせのために参加しただけ。そういうなまえは?飲みすぎたらチャンス逃げちゃうだろ」
「…わたしはただ、友達にサークルの飲みって騙されただけだよ」
「…彼氏いるの?」
「…いないけど、さ」
「………やっぱり今日、ついてたわ」


ふわり、と男らしい腕に抱きしめられた。びっくりして思わず、ぎゃっ!なんて可愛げのない声を上げてしまう。頭の上からクスリとこぼれた笑い声が彼の余裕を表しているかのようでなんだか悔しくて、せめてもの反抗にとわたしは彼の胸板を強く押した。けれども鍛えられた身体はびくともせず、それどころかさらにきゅっと抱きしめられ、距離を詰められてしまう。


「なあなまえ、ちょっと聞いてほしいんだけど」


耳に吐息がかかった。ダイレクトに吹きこまれたバスヴォイスにわたしの身体はぴくりと反応する。そっと視線を上げてみれば、それはそれはやさしい目を向けられていて。もう一押しというかのように彼は「ねえ…お願い」と囁いた。なんて馴染みやすい声なのだろう、まるで暗示をかけられたかのようにふっと力が抜けていく。その姿に満足したのか、彼はもう一度微笑みながらわたしを優しく抱きしめた。


「…小さい頃から目をかけてたからさ、妹みたいに思ってたんだ」


優しくて誰とでも仲良くなれる。それが長所なのに、そこに至るまでが苦手ななまえがいつも心配でさ。ちょっとしたきっかけを作ってなまえがいつも笑ってくれてたらいいなーってたったそれだけのことだったのに、気づいたらずっと隣にいて。それが当たり前になってた。だからこそ、あの日なまえに拒絶されて初めてなまえは俺の特別だったって気づいたんだ。
その頃の“特別”の意味は、10年近く一緒にいた大事なヤツくらいのものだったけど、…面白いことに、離れてみたらさ、どんどん意味が変わってくんだよね。どんどん独り立ちしていくお前を見るたび、嬉しいはずなのにさみしくて。バレーに打ち込んでみてもどこかぽっかり空いた感覚が拭えなかった。周りの目が気になる時期だってわかってても、なまえはなんにも悪くないんだって、多少強引にでも一緒にいたいって、なんであの時言えなかったのかずっと後悔してた。そしたら今日、運命の再会ってやつじゃん?まさかまさかの出来事だよな。席は一番離れてたけど、俺はすぐにお前だって気づいたよ。どんなに大人っぽくなったって、ポカーンとした顔が昔の頃とそっくりなんだもん。…いてえな、叩くなって。可愛かったよ。
とにかく俺はこのチャンスを生かすほかないと思った。本能がお前を捕まえろってそう叫んだんだ。だからこうして回りくどいことをしてでも、なまえと二人の時間を作ったんだよ。


「…それで?」
「え?」
「…いっちゃんは、結局どうしたかったの?わたしに何を求めているの?」


経緯は十分わかった。でも、肝心なこと、言ってない。ほんとに回りくどいね。まどろっこしいことは、酔っ払いの頭じゃわからないよ。
おめでたいやつだと言われるかもしれない。勘違いしすぎって笑われるかもしれない。だけど、そうじゃないと。どうかわたしに確信をくださいと願いを込めて、その逞しい胸板に頬を寄せる。


「…俺、もうガキくさい揶揄からお前を守れるようになったよ」
「……うん」
「でも俺が成長したように、きっとなまえもいい意味で変わったんでしょ?昔よりちょっとは強気になったもんな。…まあ、多少ビビったけど」
「ふふっ、ありがと」
「一緒にいられなかった時間をこれから共に埋めたい。ここから先は背伸びなんかせず、等身大のままの二人で同じ道を歩みたい。

…俺と、付き合ってほしいんだ。」


わずかな沈黙の後、わたしは小さくこくんと頷いた。それは止まっていた二人の時間が再び動き出した瞬間だった。なんだか今日はずっと夢をみているみたいだ。そんなことをぼーっと考えていると、「…酒の力って怖えな。ちょっと話したついでに連絡先交換して、また昔のような関係に戻れたらって思ってたのに、こんなことまで言わすなんてな。ワリィ、ちょっとクサいな?」と、彼ははにかみながらそう呟いた。そうしてようやく私の顔を覗き込んだ、のだが。


「…え、なんで泣いてるの!?」
「…っ、お酒のせいで、泣いてるの!」
「えーなに、泣き上戸?」


酒ってほんとに怖いのな。明日記憶飛んでるとか、そういうの無しな?そう言いながら目線はわたしに合わせて、ぽんぽんと頭を撫でてくれる。なにも変わらぬその温もりが長年どうしようもなく恋しかったものだと理解しまた涙を流すと、彼はあーしょうがないなと自身のポケットからハンカチを探してくれた。ああ、街灯が少なくて本当によかった。ここまで薄暗くては人もなかなか通らないし、こんなにぐちゃぐちゃになった顔も至近距離ですら見られにくいのだから。

涙がだいぶ落ち着いた頃、彼はまるで小さな子供に言い聞かせるかのように「どんなに離れてても俺らの仲は変わらないよ。…いや、それ以上になれたかな」と言葉を紡いだ。いつか聞いた懐かしい台詞と彼の変わらぬ微笑みに、わたしはすっかり安心感をおぼえる。もしかしたら、もう『いっちゃん』という存在は『わたし』が生きるためには必要不可欠なのかもしれない。どんなに自律しようと努めても、求めて止まない温もりなのかもしれない。わたしの身体にそう刻み込まれているとしたら、…なら、仕方ない。つまらない意地を張るのはおしまいにしよう。

きっとわたしはこの先も気づけば彼にくっついて、つい頼ってしまうのだろう。彼もそんなどうしようもないわたしの面倒を見るのがある種の生きがいになっているのかもしれない。結局のところ、お互いに離れるという発想が出来ない思考になってしまったために、わたしはこれからも彼から卒業することはできないのだと、そっと悟った。


刹煖宸フ涙腺は脆い
松川一静(HQ!!)
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