◎企画大人様に提出
◎名前変換なし



小さい頃から気付けば私は彼女に付いていた。それは月日が流れ、私が中学生、彼女が成人になっても変わることはなかった。

何故相手が彼女だったのか、きっかけなんていうものはもうわからないがその頃から不器用だった私が彼女と一緒にいることでひどく安心したのは確かだ。そして何年経っても変わらずになついていた私を彼女もまた変わらずに可愛がってくれた。

今思うと、彼女に対する特別な感情が芽生え、日に日に大きくなっていったのは必然でもあり偶然でもあるのかもしれない。
同時に、一時期人を信じきれなくなった自分が嘘のように人の温もりを、当たり前の日常の中にある何気ない幸せを感じることができる時間がずっと続いていくのだと心の片隅で勝手に思い込んでいたのも間違いない。


ある晴れた日のこと、いつも通りのんびり会話をしようと思い、私が彼女の部屋を訪ねていた最中のことだった。彼女が見知らぬ男と仲良さげにお日さま園にやってきたのは。
ぱったりと玄関で会う3人。自然と身体は硬直した。


「あ、風介!」
「……その人は誰だ…?」


震える声と背中に伝わる冷や汗。嫌な予感がして視界がどんどん狭くなっていき軽い目眩が襲ってきたことは記憶に新しい。
そんな私とは相対して相手の男を見て愛しそうに微笑んだ彼女。次の瞬間、彼女が放った一言を私は一生忘れることはないだろう。


「うん…私達、今度結婚するの」

直後、目の前が真っ暗になった。





何度も悪夢であれと願った。しかしついにこの日はやってきた。遠くで純白のドレスに身を包み幸せそうに笑う彼女の姿が見える。それを見て漸く自覚した。嗚呼、これが現実なんだと。
急に襲ってきた空虚感。気づけば私はそっと席を立ちその場を後にしていた。晴矢のおい、と驚く声やヒロトのそっとしといてあげなと彼を止める声が聞こえたような気がしたがよく覚えてはいない。

外に出てみればあの日と同じよく晴れ渡った空があった。今の私の気持ちを表すのには正反対だ。
私は近くの階段に腰を下ろす。そして今さらながら好きな女の幸せを心から祝うことが出来ない自分に嫌気がさしてきた。
だが、仕方ないじゃないか。あまりにも急な出来事が立て続けに起こったあまり、気持ちの整理がまだついていないんだ。

ふと頬に感じた暖かな液体。
私は決して下は向かず、流れる涙を拭おうとしない。そんなことしても余計に惨めで、そして虚しい気持ちになるだけだ。


「…呆気なく終わったな」


君に近づく為に精一杯背伸びをしても最後まで2人の年の差を埋めることは出来なかった。それどころか結局、私は最後まで自分の気持ちを彼女に伝えることはなかったのだ。
では、私がもう少し早く生まれていれば、或いはもう少し早く大人になっていれば何か状況は変わっていたのだろうか。
そんな下らないことしか考えられない私は彼女と比べたら様々な意味でまだ幼いのかもしれない。

全く、後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
とりあえず、今だけは思う存分泣くことにしよう。


ミ ル ク ブ ル ー の
海 に 堕 ち た



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企画様に提出。
テーマは『大人』。大人になりたい子供な彼らということでまだ成長途中だからこそ感じるのではないかという純粋な気持ちや頭ではわかっていてもどうすることもできない矛盾した思い、焦燥感のようなものを私なりに詰め込んでみたのですが…いかがだったでしょうか。

私自身、まだまだ未熟な年齢ですのでこんなような気持ちになること、時々あるんですよね。(残念ながら、ここ数年恋愛はご無沙汰ですが!)共感して下さる方がいらっしゃったら幸いです!

最後になりましたが、素敵企画に参加させていただき本当にありがとうございました!

(2012.1.17.//Title.自慰様)