私には1つ年上の彼氏がいます
名前は基山ヒロト先輩。私がマネージャーを務めるサッカー部の先輩です。同じくサッカー部の南雲晴矢先輩と涼野風介先輩ととても仲がよくて周りは彼らのことを『3TOP』って呼びます。

3TOPは所謂学校中のアイドルで3人共凄まじい人気を誇っています。中でもヒロト先輩は特に人気が高くて私なんかと付き合っていていいのか、時々不安になります。でも、そんな時先輩は必ず「なまえがいい」って言ってくれるんです。その言葉を聞くと私の心は不安が掻き消され、たちまち幸せな気持ちで満たされます。

私達が付き合い始めたきっかけは驚くことにヒロト先輩からの告白だったりします。前々から先輩のことが好きだった私はその場で告白をOKしました。このことが次の日には学校内に学年問わず広まっていたことには本当に驚きましたが、不思議と変な嫌がらせを受けることはありませんでした。これはあくまでも私の予想ですが、もしかしたらヒロト先輩がその時すでに手を打っていてくれたのかもしれません。とにもかくにも、私達はそれから至って穏やかな交際を続けています。

今日の放課後もグラウンドではサッカー部の皆さんが元気にボールを蹴っています。私はマネージャーの仕事をこなしながらも目線では常にヒロト先輩を追っていました。真剣にサッカーをやる先輩はやっぱりかっこよくて、汗を流すその姿はなんとも言えない色気を放っていて、もう私の心臓はどきどきです。だけど、その姿を見ているのは私だけではないのかもしれないと思うと気が気ではありません。同時に、なんだかもやもやした気持ちになりました。
休憩時間になるとすぐに私はタオルとドリンクを持ってヒロト先輩の元へ駆け寄ります。先程のことがあってかいつもより笑顔がぎこちないように感じましたが、先輩に変な心配を掛けさせまいとなるべく態度には出さないよう細心の注意を払いました。そうやって気をつけてはいたのですが、鋭いヒロト先輩にはすぐに異変に気づかれてしまいました。どうしたの?何かあった?心配そうにそう訊ねる先輩を前にしたら私は言い出す他ならなくなってしまいます。
ちょっとだけ他の女の子に嫉妬しちゃったんです、全てを話し終えた後そう付け足して私はヒロト先輩の様子を窺う為にちらっと顔を上げました。すると先輩は何故かクスクスと笑っています。そして、なまえは本当に可愛いなあなんて言うんです。先輩のいう可愛さがわからない私は首を傾げるばかりでしたが、ちょうど休憩時間が終わりを告げたのであまり深く考えないことにしました。私はヒロト先輩からドリンクとタオルを受け取ります。その時、私の耳元でそっと囁いた先輩の言葉によって私の胸は大きく跳ねました。


「俺はなまえ一筋だから安心してね」


南雲先輩と涼野先輩と共に自分のポジションに戻っていく先輩を私はリンゴみたいに真っ赤な顔で見送りました。直後振り返って優しく微笑んだヒロト先輩の顔がずっと頭から離れません。

ねぇヒロト先輩、
私はとっても幸せです。