◎企画 オーライ 様に提出



「なまえさん、なまえさん!」
「ん?どうしたの?」


聞いてくださいよ、さっき豪炎寺さんと特訓してた時に、なんて身振り手振りで話す彼。そんな彼の話を私もうん、うんと相槌を打ちながら一生懸命聞く。その感覚は後輩というよりまるで弟と会話しているかのようだ。
ずっと弟が欲しかった私にとって弟に近い存在がいることはとても喜ばしいことで。だからつい、無意識のうちにこうやって頭を撫でちゃう訳で。


「……また子供扱いですか」
「そんなことないよ、弟みたいで可愛いなって思っただけで」
「おれには同じように聞こえます」


ぷくっと頬を膨らませ、拗ねた態度を取る彼。そんな彼がまた可愛らしくて、私はくすくす笑いながらも休憩が終了したことを伝える。「ほら、練習再開だよ?頑張って」「もう、わかってますって!」
彼の肩にそっと手を置き、くるっと身体を半回転させた私。そのままそっと背中を押して練習に戻ってもらう、はずだったのに。


「ねぇ、なまえさん」


なあに?そう返す前にちゅっと可愛いらしいリップ音。さっきまで目の前にいたはずの虎丸君は何故か私の真横にいるし、私の頬は何故か熱を持っているし。急なことで正直、何がなんだかわからない。


「へへっ、仕返しですよー!」


いたずらっ子のように笑ってグラウンドに戻っていった彼を見て、漸く理解することが出来たわ。
…ああ、してやられたみたいねって。



ストロベリーキャンドル
- 素朴な可愛らしさ -