◎企画 Bakkyum! 様に提出



「三国さんはコーヒーいけそう」
「わかりますっ!先輩大人っぽいですもんね!」
「シン様は紅茶。」
「確かにな。アイツの家金持ちだし、いいヤツ飲んでんじゃねぇの?」


休憩時間に選手に渡す為の真っ白いタオルを畳みながらマネージャーのみんなでくだらない話をしながら盛り上がるのはよくあること。今日の話題はズバリ“サッカー部のみんなに似合う飲み物は何か”。あくまでも私達の勝手なイメージなんだけどね。だけどこれが意外と楽しい。「信助はオレンジジュース」「錦は緑茶」「車田さんはビンの牛乳」「茜ちゃん、ピンポイントすぎ!わかるけど!」本人達がいないところでこんな話をするのもあれだけど、だからこそ出来る話でもあるからやめられない。


「あっ!私、剣城君はブラックコーヒーだと思うんです!」
「あー、それわかる。ミルクも砂糖もなしでな」
「むしろ甘いもの苦手そう。」
「………」


彼氏の名前が出てきたからかほんの一瞬会話に交ざらなかった私。ドキッとして反応が遅れたって言った方が正しいかもしれない。だってさ、「なまえさん、どうなんですか!?」「お前なら剣城のことよく知ってんだろ」……ほらね。こうなると思ったんだ。仕方ないから悩みに悩んだ結果、私の返答はこうなった。


「さあ…どうだろうね?」


ご想像におまかせ!満面の笑みを浮かべてちょうど畳み終えたタオルを持って立ち上がれば、タイミングよく鐘の音がした。彼との待ち合わせの時間を告げるものである。「あ、じゃあ先に上がるね!お疲れさまー」もちろん、3人にものすごい勢いで文句を言われたのは言うまでもない。「なんだよその曖昧さ!意外と砂糖多めとか言いたいのかよ!」「えーっ、それはないと思いますよ!」「想像できない…」その言葉を背中で受け止めながら、ああ私の言い方は上手かったなんて思ったのは内緒ね。






「……なんだよ」
「え?何が?」
「顔にやけてる」


暗くなった帰り道、隣には私より頭1つ分身長の高い京介の姿。「何かいいことあったのか?」「ふふっ、なんでもなーい」そのとき、いつもみたいに通学路の途中にある自販機に差し掛かって私達は一旦立ち止まる。そのままお金を入れた彼の様子をそっと伺ってみた。……やっぱりね。思わずまたにやけ顔が止まらなくなる。彼の指の先にあるもの、それは、


「今日もココア?」
「あ?」
「いや、相変わらず甘党なんだなって思っただけ」
「……悪いかよ」
「ぜーんぜん!」


ガゴン、なんて独特の音がした直後、彼は屈んで目的のものを取り出すとすたすたと先を行ってしまった。え、ちょっと待ってよ。私まだ買っていないのに。慌ててお金を入れて自分の分を買う。ちなみに今日買ったのはコーラ。これなら京介とも一口交換できるでしょ?
すぐに自販機の下に手を入れ、冷たいと顔をしかめつつも先を行く京介に必死に追い付こうとする私。「京介、早いってば!」「………」もう。ちょっとからかっただけなのに。お返しといわんばかりに私は彼の隣に着いた瞬間、走ってきたそのままの勢いで冷たい缶をえいっ!と彼の頬にくっ付けてやった。


「…っ!お前なあ…!」
「先行っちゃう京介が悪い!」
「なまえが…!」


私が何よ?そう言いたげに京介を見つめてみればなんでもねぇよ、と顔を背けてしまった。あらら、ふてくされちゃった。ちょっと苛めすぎたかなあ。だけどすぐに、私は彼の耳が真っ赤になっていることに気づいてしまったんだ。……もう、わかりやすい子。大丈夫。ちゃんとわかっているよ、京介の言いたいこと。「悔しいんでしょ?私がコーヒーをブラックでも飲めること。たった1つの差なのに」「……」「沈黙は肯定と見なします!」改めて自分の持つ冷たいアルミ缶に手をかけ、ぷしゅっといい音を鳴らす。


「お前、よくそんな冷てぇの飲む気になるよな」
「いいじゃん、交換した時あったかいのと冷たいのでちょうどいいし」
「……あっそ」


先程の私と同じように暖かいスチール缶に手をかけた京介。今度はパキッ、という音がした。「あれー京介くん、顔にやけてるよ?」「…うっせ。なまえほどじゃねぇよ」「えー?」そんなことを言いながらもどこか嬉しそうなのに変わりはない。全く、私の彼氏はわかりやすいけれど相変わらず素直じゃないみたいだ。そんな京介にどうしようもない愛しさを覚え、私は彼の腕に抱きついた。



ねぇ水鳥ちゃん、砂糖が多くてもミルクが多くても駄目。彼はコーヒーの苦味自体が苦手なの。葵に茜ちゃん、想像でも絶対辿り着かないで。京介が、甘いもの大好きだなんて。
誰がこんなに可愛い京介を教えるもんか。これは彼女である私だけが知る秘密なんだから!

そんな彼の意外な一面も含めて、ぜんぶ、ぜんぶ、あたしのものよ。



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企画様に提出。京ちゃんオンリーの夢企画ということで、京ちゃん大好きな気持ちをたっぷり込めて書かさせていただきました。
私が選択したお題は「甘いもの」。苦いものが苦手で1歳歳上の彼女に子供扱いされているような気がしてならない、そんな京介を書いてみました(ちなみに夢主にはそんな気はないです)
余談ですがブラックコーヒーを余裕で飲む京ちゃんも、飲めない超甘党な京ちゃんもどちらも素敵だなあと本気で思います…!
素敵企画に参加させていただき本当にありがとうございました!