◎企画 甘毒姫の幸福論 様に提出
◎名前変換なし



「南雲君、大好き」
「んなの、知ってるっつの」


ふわりと口付けを落とされた。甘い甘い、綿菓子みたいなキス。まるで眠りの森のお姫様が千年の眠りから目覚める時に王子様から贈られた優しく、可愛らしいキスのようだ。
彼の唇と私の唇がくっつくその僅かな時間は私の心がときめく瞬間。何回も何回も同じことを繰り返しているけれど、この瞬間が変わったことはない。
だけどね、やっぱりどこか物足りないんだよなあ。どうせならもっともっと深いところまで愛してほしい。だって私、寂しがり屋なんだもん。あなたで私をいっぱいいっぱい満たしてほしいの。


「南雲君…」


ちょっと甘えた声で名前を呼んで、いつものように熱を孕んだ目で上目遣いをする。彼がこの仕草に弱いのは十分承知の上よ。それを合図に…ほらね?私が欲しかった深い深い口付けが贈られてきた。ああ、南雲君はやっぱりキスが上手い。ふふっ、癖になっちゃうなあ。
彼の口づけに酔いしれながら、ふと思った。なんだかこれって一種の中毒みたい。依存性は相当高いんじゃないかしら。気づかないうちに禁断の毒リンゴでもかじっちゃった?なーんてね。(だからといって眠りにつくわけではないけれど。)

そんなことを思っているうちに、気付けば私は彼のベッドに押し倒されていた。ぞくぞく、私の中に僅かな興奮が走る。「南雲君、あのね…」深紅の髪に近付き耳元でそっと囁いた言葉。それを聞いた瞬間、本格的に彼の目付きが変わった。黄金色の瞳がギラギラしている。厭らしく笑いながらどんどん距離を縮めてくる。…ああ、やっぱりあなたも男ね。こんな子供騙しにも簡単に引っ掛かってくれるなんて、本当に単純なんだから。野獣のような彼に気付かれないよう、私はそっとほくそ笑んだ。


ねぇ南雲君、気付いてる?
私ね、あなたが思っている以上に寂しがり屋なのよ

“ねぇ、寒いの。あたためて?”
こんな台詞、自分を満たす為だったらあなたとは別の男の子にも簡単に言えちゃうんだから。
とりあえず、今はあなたのその燃え盛る紅蓮の炎で私をいっぱいいっぱいあたためてね…?



寒がり眠り姫は人肌がお好き




----------
企画様に提出。テーマは「少々毒を持った少女」でした。
素敵企画に参加させていただきありがとうございました!