◎ちょっぴり嫉妬?



尾刈斗戦の後、もう1つ印象的だったこと。
なんと、あの染岡が修也のことを雷門のストライカーとして認めたのだ。あんなに刺々しい態度で接してたのに少しずつ角が取れて、確実に仲良くなっていって。ほら、今だって2人で笑いあってるし。あんなに楽しそうな修也、久々に見た。なんか…妬けるな。


「染岡、私の修也取らないでよ」


なんとなくそんな2人を見ていたらイラッとしたので、ぎゅっと修也の腕を掴んで引き寄せた。そのまま背中越しにううーっと唸ってみる。「ハァ?お前、バカじゃねえの?男の俺に嫉妬かよ」「いや、普段は女の子でもあんまり妬かないけど染岡はなんかイヤだ」「意味わかんねー!」染岡に意味わかんないって言われても、よくわかんないのは私も同じだもん!なんて子供っぽい理屈でかえしたら鼻で笑われた。だって本当のことだもん、染岡と修也が一緒にいるのなんか…いやだ。部活の付き合いっていったらそれまでなのはわかるんだけどさ…!


「ハッ、豪炎寺お前よくこんな子供っぽいのと付き合っていられるな」
「修也はあんたと違って心がひろいから、なんでも受け止めてくれるんだよ」
「んだと…!」
「何よ、全部ほんとのことじゃんか!」


怖い顔。甘ったれ。暑苦しいやつ。重い女は嫌われるぞ。遂には幼稚園児みたいな言い争いに発展した。ぎゃいぎゃい騒ぐ私達の間に立つ修也は最早呆れ顔だ。「やっぱりこんなやつと修也が話してるなんてやだ!」子供っぽいことをやってるのは自分でも理解してる。すんごい面倒くさいこと言ってるのも。あれ?私ってこんなにうざったい子だったっけ。


「真央、」


お互いにハァハァと肩で息をするようになった頃、修也に名前を呼ばれてそっと咎められた。黒目がちな瞳がじっと私を見つめている。「……ごめんなさい」確かに今のは言い過ぎた。私にそこまで言える権利はない。そう思ったら居心地が悪くなって思わず視線を下に落としてしまった。なんで私、泣きそうになってるんだろう。今日のわたし、なんかへんだ。


「真央、顔を上げてくれないか」
「……っ」
「……真央」


いつも以上に優しく私の名前を呼べば、彼は膝に手をついて屈み私を下から見上げた。こんなことされたら自然と目を合ってしまうのはわかっていて。その姿はまるで融通の効かない小さな子供とその子をあやすお母さんのようだ。
ああ怒られるかなあなんて思っていれば、私の予想に反して修也はそのおっきな手で頭を撫でながらやさしく微笑んでいて。


「え…?」
「転校したばかりでまだ慣れないことが多いんだよな」
「! ……」
「俺とはずっと前から知り合いだから一緒にいると安心するんじゃないのか?」
「…ん、」
「だから俺が誰かと話してると不安になる」
「……うん」
「自分の友人関係は大丈夫か、身近に心を許せる友人はいるかどうか考えてしまう」
「……そう」
「体力より今は気持ちの面で疲れていたんだろ」
「……あたり」


なんで私が上手く言い表せなかったことをこの人はいとも簡単に当ててしまえるのだろう。これはつまりそれだけ修也が私のことを見ていてくれてそして私のことを理解してくれている、と、そう自惚れてもいいのかななんて随分と場違いなことまで考えてしまうほどだ。


「何があってもお前はお前らしく、だろ?」
「……うん」
「大丈夫だ。何かあった時は俺がいる」


そしてその時1番ほしい言葉をくれて、たくましい腕でそっと抱きしめてくれる彼はやっぱり私の自慢の彼氏だと改めて思わずにはいられない。「……しゅうやすき」「知ってる」こんなやり取り何回もやってるけど全然厭きない。むしろ言葉にすればする程彼を好きになっていく私はかなり重症なのかな、なんて。そんなことを思いながら程よく筋肉のついたその胸にトン、と頭を預けた。


「ありがとう、修也」
「ああ。…なあ真央、」
「ん?」
「不安になってるところ悪いが」
「んー」
「俺には真央だけだよ」
「……へ、」


今度はなんだろうなんて思いながら彼の言葉に耳を傾けていれば、それはあまりにも唐突すぎる言葉で。びっくりして思わず顔を上げてぽかーんとしていると、彼は変わらず私をいとおしげに見つめていて。“そこは不安視するなよ”なんて…ああもう、不意討ちもいいところだ。
やっぱり修也には敵わないみたい。そんなことを思いながら、私は真っ赤になった顔を隠すようにもう一度彼の胸に顔を埋めた。



「染岡、すまなかったな」
「いや、むしろ助かった。サンキュな」
「ちょ、染岡近づくな」
「やっぱお前うっぜえな!!」
「(あんなに子供っぽい真央は久々に見たな…)」



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別タイトルは「染岡vsヒロイン」。この2人は喧嘩友達みたいなノリです。ちなみにヒロインは第一印象がよほど最悪だったのか、今はまだ染岡を敵視しているもよう。2人の今後の関係に注目です
にしても慰めてたと思ってたらいきなり目の前でいちゃつきはじめて、染岡相当気まずかっただろうなあ。笑