◎理事長のむすめさん!



とある日の放課後、私は理事長室に呼ばれた。え?なんでそんなところに呼ばれたのかって?いや、私別に問題起こすような生徒じゃないし、そもそも起こしてもいないんだけどね。今日はある人に呼ばれたの。


「失礼しまーす」


どっしりとした扉をノックして遠慮がちに開いた私。いくら相手に呼ばれたとはいえやっぱりここがすごい部屋であることに変わりはなくて。多少は緊張しちゃうよ、そりゃ。


「あら、早かったわね真央」
「夏未!」


私より紅くてキツめに巻かれた長い髪。背が高くてスラッとしたナイススタイル。それは私の昔からの友人だった。「うわーひさしぶりーっ」嬉しさのあまり私はぎゅっと抱きつく。たちまちバラのいい香りがした。


「相変わらずね、真央」
「えー、夏未だって美人なところは変わらないよ」
「そういう意味じゃなくってよ」


呆れたように笑いながら夏未も同じように私を軽く抱きしめた。そのことが嬉しかった私はさらに抱きつく。「真央」「んー?」「さすがに苦しいわ。そろそろ離れなさい」「あ、ごめん」思わず力を込めすぎたようだ。





「それで、学校生活はどう?」
「うん、はじめはいろいろ戸惑ったけどもう大丈夫だよ」


修也も春奈もサッカー部のみんなもいてくれるしねなんて笑えば彼女は安心したような、それでいてちょっと複雑そうな顔をした。ああ、まだサッカー部に対する印象良くないのかなあ。夏未に出してもらった紅茶とクッキーを口にしながらそんなことを思った。


「彼とは上手くやっているようね」
「うん、もちろんだよ。夏未にもお世話になったよね。いろいろとありがとう」


修也を諭してくれたのも私達を同じクラスにしてくれたのも全ては彼女のおかげだ。本当に感謝している。ちゃんとしたお礼は初めてだったからびっくりしたのだろう、夏未ったら顔を赤く染めて“べ、別にあれは彼がはっきりしない顔をしてたからイラッときて言っただけで…”とか“たまたまあのクラスは転校していった人が多くて人数が少なかったからバランス調整のためにあなた達を同じクラスにしただけよ!”とか言うんだもん。あ、めずらしく焦ってる。ツンデレさんだなあもう。だけどやっぱり可愛い!「なつみすきー!」「はいはい、わかったわよ」しっかり者で冷たいように見えて実は優しくて。高飛車なところもあるけどそこも含めて『雷門夏未』。結局、私はこの子のどんなところも大好きなのだ。


「あーあ、夏未もサッカー好きだったらなあ」
「興味がないわ」
「総一郎おじさんは好きなのにね」
「父は関係ないでしょ」
「そりゃそうだけどさ」


筋金入りのサッカー好きなお父さんの血が流れているのだ。多分何かきっかけがあれば夏未にもサッカーの面白さをわかってもらえると思うんだけど。
そう思ったが口には出さなかった。だって血がうんたらとかサッカーの面白さとかそういうのって押し付けちゃダメだもんね。


「あ、じゃあ私そろそろ部活行くね」
「ええ。楽しかったわ」
「私もすごく楽しかった。おじさんとおばさんによろしくね」
「真央のご両親にもね」
「了解!」


ごちそうさまでしたと挨拶して席を立つ私。扉の取手に触れた時にふと言いたかったことを思い出して再度彼女の方に身体を向ける。


「ねえ夏未、」
「何かしら?」
「今度さ、時間あったらサッカー部の試合見にきて!」
「え…」
「遠くで見るよりさ、近くで見た方が楽しいだろうし!」
「…考えておくわ」
「約束だよー?じゃあまたね!」


そう言いながら私はようやく理事長室を後にした。あんなことを言っていたが、夏未のことだ。どんなに忙しくてもきっとサッカー部に嫌味という名の声援を送るため見にきてくれるんじゃないかな、なんてね。





「あれ?お姉ちゃんどこに行ってたの?」
「もう休憩だぞ真央!」
「あ、春奈に円堂。それにみんなも。ごめんごめん。理事長室に呼ばれててさ」
「え、理事長室?」
「おい菊地、呼ばれたってどういうことだ。何か問題起こして…」
「染岡じゃあるまい」
「んだと…!?」
「だーかーらー!夏未に呼ばれたの!ちょっとお茶しようって」
「ハァ?…って、こいつあの雷門夏未を呼び捨てに…」
「うん。私と夏未、お母さん同士が仲良くて小さい頃よく一緒に遊んでたんだよ。だから友達なの」
「え、」


直後、部員全員(修也と影野くんを除く)の口から驚きの声が発せられたのは言うまでもない。え、そんなにびっくりすることかな?



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転入したてで尚且つ小さい頃からの友達だからか夏未の偉大さがいまいちわかっていないヒロイン。
ちなみにヒロインの養母と夏未のお母さんは高校時代の友人で大人になってもたまに家族ぐるみで会ってた=これがヒロインと夏未の出会いという裏設定。そんなに使わない設定なので2人は昔からの友人程度に覚えていてもらえれば大丈夫だと思います