及川、岩泉母に報告する
※2話の後の話
絶対に面倒なことになる。
岩泉は、共に帰路につく幼馴染みが妙に今日の事に触れてこないので不審に思っていた。
まるで覚えていないかのように、今日後輩の女の子に告白された事をぺらぺらと話している。
逆に気味が悪い、と岩泉が思っている間に、二人は互いの家の前に着いた。
「今日岩ちゃん家に行ってもいい?いいよね?」
「駄目だ」
ほら見ろ、こうして家に押し掛けて来て根堀り葉堀り聞いて来るに違いない。
こういう時、家が隣同士というのも考えものだ。
さっさと家に入ろうとする岩泉に追いすがる及川を適当に長し、玄関のドアを開けると母さんに出くわした。
「あら、一、徹君おかえり。丁度良かったわぁ」
今日及川さん帰り遅くなるらしいから、徹君うちでご飯食べていってちょうだい。
母親がほがらかな笑顔でそんな事を言う物だから、及川は満面の笑みで「やったぁ!」と感激の声を上げ、岩泉は口元をひきつらせた。
これはまずい、本当にまずい。
岩泉の直感は、食卓について2秒で的中した。
「で、栗原ちゃんとどこで、いつ仲良くなったの?」
母親が同じ空間に居る場所でその話題を振るか普通?
岩泉は信じられない、と言いたげな目で及川を見るが、及川はフンと鼻で笑った。
黙っていたことにへそを曲げているのか、やや拗ねているようでもあった。
「…その話は後にしろ」
「やだ。今すぐ聞きたい。待てない」
駄々をこねる及川の前に、母さんがカレーの入った皿とお茶を置く。
「なぁに、栗原ちゃんって新しいお友達?」
「違いますよ」
妙に爽やかな笑顔を浮かべる及川の口を塞ごうと立ち上がるも、及川は体を後ろにそらしてニヤニヤと笑った。
くっそ殴りてぇ。
「今日、岩ちゃんの彼女になった女の子です」
「…えっ、彼女!?」
最悪だ…。
母さんが妙にきらきらした目で、及川の発言に食いつく。
そして興奮したように、息子に視線を向けた。
「一、あんた彼女できたの!?どんな子!?」
「…知らん」
「知らんってことはないでしょ!どっちが告白したの?」
キャーキャー声を上げる良い年をしたおばさんに寒気を覚える。
母親と及川、二人揃っての質問責めに、岩泉は頭が痛い。
「ま〜、あんたとつき合ってくれるだなんて、貴重な女の子なんだから大事にしなさいよ」
「あーはいはい」
「で、どっちから告白したの?」
「栗原ちゃんだよ、ほぼ事故みたいな告白だったけど」
「お前がそれを言うのか、及川」
「まぁー、あんた女の子に告白させたの?」
「で、栗原ちゃんの事いつから好きだったの?」
「何でお前にそんな事言わなきゃいけねぇんだよ…」
「あと、なんで俺に黙ってたのさ!」
「面倒くせぇじゃんお前」
「酷い!及川さん二人のキューピッドみたいなものなのに!」
「…お前、あいつ泣かしといて良くそんな事言えるな」
岩泉の低い声に若干たじろいて「ごめん」と素直に謝るあたり、反省はしているらしい。
「徹君、栗原ちゃんってどんな子なの?」
「ん〜、女子バレー部の子なんだけど、素直な子ですよ」
「あら〜。一、今度うちに連れてらっしゃい」
「絶対嫌だ」
もう照れちゃって〜、と及川と母ちゃんが二人して岩泉をつつくものだから憤死しそうである。
この日、結局及川が帰るまで栗原との事について突っ込まれ続け、皮肉にも疲労のために岩泉はぐっすり眠る事ができた。
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