れたい熱



ああ、頭が、ぼんやりする。


ふ、と短く息を吸っては吐き出す。ちゅ、と微かに聞こえてくる音が気恥ずかしくて、なまえは閉じていた目をさらに力強くぎゅっと瞑った。なまえの目の前には、長身の男──悟浄が、覆いかぶさるようにして視界を塞いでいる。目の前の男が唇の角度を変えるたびに、さらりと頬に触れていく髪の毛がくすぐったくて、なまえはぶるりと肩を震わせた。


──広い風呂を堪能したくて、人気の少ない夜中を狙って部屋を出て。満足いくまでゆっくりとつかり、上機嫌で部屋に戻ろうと宿の廊下を歩いていた時だった。
ふ、と視線を上げると、自分の部屋のドアに寄りかかる一人の影。こんな夜中にどうしたのだろう?何か用事でもあるのだろうか?と警戒することなく近づいて──飛んで火にいるなんとやらかよ、と嗤った悟浄の言葉に首を傾げる間もなく、部屋に連れ込まれて扉へと押し付けられた。


それから、何分経ったのだろう。
悟浄は飽きることなく、なまえの唇へと軽い口づけを落とし続けていた。その身体を押しのけて言葉を交わそうと試みるもの、男の力に敵うはずもなく。ただされるがままに、なまえはその唇を受け止めることしかできずにいた。


「ん、ンっ」
「…かーわい」


ちゅ、ちゅ、と耳に届く音が羞恥心を煽っていく。耳の裏をかすめるように触れたり、頬をなぞるようにたどっていく指先も。鼻孔を擽る嗅ぎなれたハイライトの匂い、時折瞼に触れる長い睫毛の感触、劣情を煽るように足の間に悟浄の膝がぐっと差し込まれて──ついに、なまえは耐えきれなくなった。


「…ッ」


驚き、くぐもった声が悟浄から漏れる。
縋るように悟浄の胸に添えられていたなまえの手が、その首を引き寄せるように絡められた。軽いキスを落とすだけだった悟浄の唇を、なまえの舌先が擽っていく。それはまるで──


「…誘ってんのか?」
「…どっちが…」


部屋には、二人きりしかいないはずなのに、秘密ごとを共有するかのようにささやかれた言葉。至近距離で絡んだ瞳は、隠しきれない熱を孕み、挑発するかのようにお互いを見つめ合った。それが合図となったかのように、軽いキスから今度は絡めとり合うかのような口づけへと。


「ンん…っ、ふ…っ」


今度は直接脳に響くかのように聞こえてくる水音。服の裾をたくし上げて、腹をたどり、なまえの体へと官能的に触れていく指先。


「…ごじょ…」
「……ン?」
「あ、…ッと、きす、もっと…」


触れ合えなかった日々の熱を埋めるかのように、もっと、もっととなまえは悟浄の頭を掻き抱いて引き寄せた。


「ハ、…上等」


そして男もまた、呼吸を奪うかのような口づけを落とし舌を絡め合わせ続ける。そして、二人を隔てるものなど今は何もないと──そう、身体で伝えるかのように、その小さな体を愛おしそうに、力強く抱きしめた。