りっく おあ とりーと?


「ただいまー…っと、……は?」
「ご、じょ」


目と目が合ったその瞬間、お互いに一瞬時間が止まった。目を大きく見開き、持っていたであろう煙草は地面の上に。一方のなまえはと言うと、一番恐れていた事態が起こり、頭が混乱を極め、ただ驚きの表情を浮かべる悟浄の姿を見つめることしかできなかった。


「…なにしてんの、なまえ」
「え、と、これは…その」


お互い徐々に冷静になっていく頭に、なまえは悟浄との距離を広げようと一歩一歩後ずさりを始めた。友だちがむりやり、ハロウィンっていって、と唇が自然と言い訳を紡ぎ続ける。ふつふつと熱くなっていく顔は、きっと羞恥から真っ赤に染まっているに違いない。いつの間にか泳いでいた視線は、悟浄を見ることすらできず。


「へー…ハロウィン、ねぇ」


──目の前の男が、ニヤリといやらしい笑みを浮かべたことにも、気付くわけがなく。急に早歩きで距離を詰めてきた悟浄に、慌てふためいたが、もう遅かった。グッと腕を引かれ、気付けば悟浄の胸の中。耳元でいたずらに囁かれて、なまえはびくりと身体を震わせた。


「トリックオアトリート、だっけ?」
「や、」
「ほら、お菓子ちょーだい?なまえチャン」
「やぁ、持ってないもん…っ」


ニーハイソックスと、下着の境目を撫で上げていく長い指に、肌が泡立つ。もどかしいような、くすぐったいような快感に、なまえは想わず艶めかしい声を上げた。その声を聞き、ことさら楽しそうに悟浄は笑う。


「それは残念?」
「っ…絶対残念なんて思ってないでしょ…」
「当たり前だろ?悪戯し放題、ってことで」


首筋に吸い付いてくる唇と、ショーツの裾からいたずらに触れてくる指先に、ぶるりと身体が震えた。抗議しようと開いた唇は、悟浄のソレでふさがれて、瞬く間に舌先が絡めとられていく。ぼんやりと熱に浮かされながら、力の抜けていく足を誤魔化そうと、なまえは悟浄の首へと腕を絡めた。