買い物

「…それじゃあ、先生、失礼します。一二三をよろしくお願いします」

『…ええええ』

カフェテリアを出るなり、2手に別れるようすの麻天狼。

このようすだと…私は独歩と一緒だよなぁ…推しに荷物持ちさせるって、全国のファンに殺される…!

「それじゃあ江藤さん、私の方からも、一郎くんにそれとなく君のことは聞いてみるが、君の方からもちゃんと連絡してくるように」

『あ、はい、わかりました…。伊弉冉さんには、逆に連絡しないので、安心してください!』

というと、一二三は驚く。

えぇ、何で驚くんだ…

「…先生、独歩くん。この子猫ちゃんはどこか特別な気がしませんか?」

「あぁ…」

「確かに特別だな」

二人とも笑っていた。

「さ、行こうか一二三くん」

「わかりました。それじゃあね、独歩くん、子猫ちゃん」

「ああ、じゃあな。…行きましょうか」

『…あ、はい』

私たちは歩き出した。

それにしても、独歩はよく見ていると思う。

一度会っただけの私の顔を覚えていたし。

一二三のことも…

もっと独歩は世界に愛されるべきだ

「…あの、何か」

『え?』

「その…視線を、感じ…いや、俺の勘違いか、そうだよな、俺みたいなの見るわけないよな、かんちが『観音坂さんが!』へ…?」

私はどうやらずっと独歩のことを見ていたらしく(顔ではない)、それに気付いた独歩が問い掛けてくるもネガティブモードに入られたので、被せて言った。

『…観音坂さんが、もっと世界に愛されたら良いのにって、思って…考えてました』

「…っ!」


うつ向いている私の視界からは何も伺えないが、何となく、独歩が顔に手をやったのはわかった。

「…そんなこと、初めて言われました」

『そうですか?私は元の世界にいるときからずっと思ってましたけど』

こうやって、然り気無く車道を歩いてくれるところ、優しいと思う。

「…あの、ありがとう、ございます」

『え!?口に出てました!?』

「…ハイ」

独歩が顔を手で覆ってしまった…

あちゃー…これめっちゃあかんやつやん…

ただのすきすきアピールしてるやつやん…

ヤバ…

『ご、ごめんなさい…!』

思わず謝ると


「…何で謝るんですか」

と、むすっとした声が降ってきた


『え…?だ、だっていやじゃないですか…?いきなり現れた知らない女からのすきすきアピールなんて…』

と問いかけると、

「…俺は、その…元々あんまり好かれないので…好かれるだけでありがたいです」

というので、謙虚だなぁと思った。


「…あ、あそこです、デパート」

『あ、ホントだ…』

話しているうちについたらしく、少し先にデパートが見えた。

「その…俺のことは気にしなくて良いので。遠慮せず買い物しててください」

『…観音坂さんの彼女は幸せになれますね』

「…は?」

『あ、すみません、女性の買い物って、普通嫌がられるので、そんなこと言ってくださる観音坂さんって素敵だなぁって…』

いろいろ飛躍したことを言ってしまった…

と後悔しつつ、中へと入った。


買い物

(そんなに買わないけどね…)