02
「忘れよう!!!……ウッ!!」
パンと自分で叩いた頬は思ったより痛くて、誰もいない女子トイレで思わずうめき声をあげてしまった。
馬鹿みたいに泣いた昨日。あのあとスリザリンの寮に帰ると、ルームメイト達からまたあの双子にやられたのか、ご愁傷様…と慰めと憐れみの言葉をもらい、適当に受け流しつつそのまま不貞寝。
一度も起きることなく朝を迎えたお陰で、腫れる目と比べて気持ちは今のところ落ち着いた。
元々、グリフィンドールとスリザリン。それに彼に彼女ができた。そうなると、私が近づかなければ接点なんてないわけで。(いつもは向こうから近付いてくるけど、もうそんな事あり得ないし)
いろいろ考えてたらまた胸が痛くなったけど、これもきっと今だけだ。
このまま忘れてしまおう。
あの赤毛を、今はまだ目で追ってしまうかもしれないけど、いずれは気にならなくなる日が来るはずだ、きっと。
鏡に映る、彼とは不釣り合いな黒髪東洋顔に笑ってから、そのまま次の授業へ足を向けた。
筈だった。
「やぁ、我らが愛しのモルモット!」
「………フレッド・ウィーズリー……」
トイレから出た直後に現れた、意中の片割れに眉間辺りがギリギリと痛む。
完全にノーマークだった。馬鹿だった…フレッド・ウィーズリーには(きっと今のところ)私に近づいて嫉妬する彼女がいない事を忘れてた…。
そんな私の心中などお構いなしに、彼と同じ顔が笑いながらこっちへ近づいてくる。
…ああ、やっぱり、笑い方が違うな。なんて思って、慌てて頭を振った。
ボーっとしてる場合じゃない。あの笑顔は!いい話じゃないに決まってる!
抱える教科書をきつく握りしめて、Uターン。
そのまま、駆け出そうとしたのだけど彼の方が早かった。
「…グェ!」
「アヒルみたいな声だな」
首根っこを掴まれ、逃げ道がなくなった。こういうとき、欧米人と東洋人の足の歩幅(長さ)に絶望する。
「…なんの用だ。」
「おお!話が早い!」
彼を軽く睨み、溜息をつきながらずれたローブを直す。
逃げ道がなくなった。こうなれば、ただ祈るしかない。
老け薬か?ゲーゲートローチDXか?なんにせよ、今回の実験台はまだマシなものでありますように…。
私が逃げる事を諦めた事がわかると、首元からパッと手を離した彼はズイッと顔を近づけてきた。
「うぇ…!?」
「僕の代わりを頼みたい。」
そう言いながら、満面の笑みで私を見る彼の目には困惑する間抜け面が映っていた。
「…………………は????」
(いつだって、
思った通りにはいかないもの)