1週間の職場体験が終わり、学校へ戻る。保須でのことは俺達3人だけが真実を知っているが、署長が言っていた手前、エンデヴァーから助けられたというようになっている。
 各々が職場体験が終わってすぐだからか、ずっとその話で教室は賑わっていた。昼食の時間になり、またいつものように緑谷と飯田と向かっていた時、自販機の近くで名字が立っているのが見えた。名字を遠くから見ていた俺が近づくのに気づいたのか、名字は目が合うと目が溢れちまうんじゃないかってくらい大きくあけて、少し小走りで近づいてきた。緑谷達には先に食堂へ行くように伝えて、俺は名字に近寄る。

「あ、の……轟くん、ニュース見て、その、大丈夫だった?」

「え、…ああ、大丈夫だ」

「そっ、か、うん、じゃないと学校来れないもんね。…いや、その、えと、違くて…あの、無事ならよかった。それだけ。緑谷くんと飯田くんも無事でよかった」

 それじゃあ、と言って教室へと戻っていこうとする名字の腕を思わず掴んでしまった。名字は驚いたようにこちらを見ている。俺もどうしてそうしたかはわからない。けどこのまま行って欲しくないと思った。あの時みたいに。

 あの時、みたいに?

「なあ、名字。俺、やっぱりお前と昔会ったことがある気がするんだ。けど思い出せない。何か知らないか? それに、少し挨拶交わしたことがあるくらいの別のクラスの奴気にするって、本当は俺のことを知ってるからじゃ…」

「ごめん。言えない。ごめん…」

「否定しないのは、お前が何か知ってるってことだよな」

「………」

「俺昔の思い出とかあまりなくて、もしお前と会ったことがあって何か嫌なことしたなら何があったのか知った上で謝りたいし、俺は名字と話したいって思う。だめなのか?」

「違うよ。轟くんは悪くないから謝る必要ない。それだけは本当。でもごめん、言えない」

「わかった。無理にはもう聞かない。これから名字と俺が仲良くなっていけばいいんだな。そしたらもっと話ができる」

「…うん?!」

「だめか?」

 ぐっ! と言う声と共に突然顔を両手で覆う名字が心配になり、大丈夫か? と近づくと、両手をぶんぶんと顔の前でふり、大丈夫だと言った。名字は大きなため息をつきながら、俺のことを見る。

「えっと…まあ、言いたくないこともあるけど…その、とにかく無事でよかった、し…そのー。まあ、今後ともよろしくね」

「ああ。よろしくな名字」

 緑谷くん達待ってるし早く行きなよ、と言った名字にわかった、と伝えた。少しだけ前に進めた気がした。無理に聞こうとは思わない。けど、知りたい気持ちはある。きっと、名字にとってペースもあるだろうし、今聞かなくてもこれから話していけばわかることもあるかもしれない。
 振り返れば名字はもう遠くへいたが、これからのことを考えて少し気持ちが前向きになった気がした。