林間学校で爆豪が連れて行かれて、神野に助けに行って。時間はあっという間に流れた。途中、名字からも連絡は来ていたが、林間学校で襲われてからは連絡が途絶えていて、俺自身もクラスメイトのことを考えていたからかそこまで気が回らなかった。
オールマイトが事実上引退をして、家で見るアイツは荒んだようだった。相澤先生が家庭訪問をし、俺たちは家を離れ寮生活となる。必要なものを買わなければいけないことに気づいて、駅前まで向かう。林間学校の延長だとは思うが、かなり長い期間同級生と過ごすのは初めてで、どんなものかと少し思う。
そういえば、普通科も確か寮生活になるはず。そう思った時に、スマホで名字とのトーク画面を開く。林間学校が終わってから、名字とは連絡をとっていない。昼休みに会うこともなくて、俺から連絡していいものか、など考えているうちに機会をなくした。
怒涛の日々だったからか忘れそうになるが、林間学校前のことを思い出す。姉さんとお母さんが言っていた名前ちゃんって言うのは、もしかしたら。
トーク画面の名字のアイコンをタップしてみる。律儀に名前はフルネーム。そこには名字名前の文字。
スマホを眺める為止まっていた足をまた動き出して駅に向かう。駅前で色々揃うことだろう。
駅近くにあるデパートに向かっていた時、ふと見たことのある後ろ姿が見えた。あれは間違いなく名字だ。どうしてこんなところにいるのか、その疑問が浮かぶ前に走り出して、名字に声をかける。
「名字!」
「! と、轟くん」
「後ろ姿がそうかなってなんとなく、思って…。久しぶりだな名字」
「うん…本当に、久しぶり。あの…ニュースで相澤先生のことも見た。すごい、心配した。怪我とかない?」
「あぁ。俺は大丈夫だ。…悪ぃ、連絡しようとは思ってたんだがなんて送っていいかわからなくて、黙ってた」
「えっ! 轟くんは全く悪くないよ! 私も、なんて送っていいかわからなくて…でも、とても心配してたのはほんと。よかった無事で」
じゃあまたね、と改札に向かおうとする名字を引き止める。どうしてここの駅にいたんだ? と。名字は少し口籠もりながら、なんとなく轟くんに会えるかな、と思ったからと言った。名前に最寄駅は確かに前一緒に帰った時伝えてたはいたが、まさか会えなかったらどうするつもりだったんだろうか。言いようもない感情が溢れて胸が詰まる。
「心配、してくれたんだな」
「う、うん…。ごめん、ただの同級生が、なんていうか、その…」
「もし時間あるなら、寮生活の足りねぇもん買いに来たんだ。少し付き合ってくれないか」
「え、う、うん。いいよ、時間ある」
名字と並んで歩く。やっぱり、名字との時間は好きだ。それに、今日会えたのは偶然で片付けたくないくらい、嬉しい。私服の名字は少しだけ化粧もしている気がする。じっと顔を見ていると、見ないでくれと顔を逸らされる。そんなところも可愛いと思った。
物を買って帰る頃。名字にどうしても言いたいことがあって、意を決して声をかける。
「名字。この前、お母さんと話をしてたときのこと聞いてほしい」
「…轟くんの、お母さん」
「あぁ。昔、俺の近所にいた子が、よく俺の家に泊まりに来てたって聞いた。その子とは仲良くしていたらしい。けど、俺はそのことを全く覚えていない。俺は思い出したい。多分、いや、きっとそうだと思う。名前ちゃんって子、名字なんじゃないか?」
名字は黙った。さっきまで笑っていた表情は一瞬で消える。それでも、知りたい。どうしても聞きたい。無言は肯定と言える。
「お前の個性のこと、教えてほしい」
「……。うん。わかった。教える。けど、今は言わない」
今夜、夢で会おう
名字はそう言って悲しそうに笑い、帰っていった。