放課後、ゲームしようぜと言って友達の家に上がり込んだ。呆れたような顔しながらも彼女は部屋へ通してくれる。
そんなに長居しなよ〜と言いながら、現在時刻を携帯で確認する。だがそこで電源がを示す表示が残り少ないことに気付き、昨日携帯小説を読みながら寝たんだと、今更に思い出した。その所為で寝不足のまま今朝登校し、携帯の充電のことなど忘れていた。
家に帰ってからでも十分だが、帰りの電車の中で暇になってしまう。電車内での携帯イジリは日課なのに。
友人はベッドの上で雑誌を捲っている。それを呼びつけておねだりをした。

「ねぇねぇ、電気泥棒していい?」

携帯をもった片手を頭上に振り上げ、肩までにそろえた黒髪を揺らして友人へと振り返った。

「いいよー、あ。でもプレステのコンセント抜いちゃだめだよ」
「そんなことしません〜。今チョコボが精神的なワールドに行っちゃう一大イベントなんだから!」

こんなこともあろうかと持参していた充電器を差し込みながら目線を画面に戻す。コントローラーによって操作されない画面は、キャラクターのセリフを表示させたまま止まっていた。
主人公は今、自身の運命を左右する場所で、仲間たちに苦しい胸の内を語っている。
コントローラーを握りながら少女は感慨深く画面の中で繰り広げられる物語に浸る。このゲームに出会ってからもう何年だろうか、何度もクリアしても彼女の中では真新しい真実に出会ったような感覚が消えない。のめり込む程に彼女はこの世界に魅入られていた。

「つーかさ、もういい加減諦めてAC見たら?##NAME1##は変なトコ完璧主義なんだから。どうせ今回もレベルMAXまであげてからじゃないとクリアしないんでしょ?」

主人公が一人で、仲間たちと離れて敵の手の内に落ちていく。青白い背景がとても幻想的で、しかし彼の運命は決して背景のごとく美しいものではなく、彼女はまた一つこの物語の世界に魅せられた。
その時、友人が声を掛けてきた。それは彼女の言うとおりのこと、##NAME1##と呼ばれた少女は画面から友人に視線を向けてにっこりと笑顔を作った。

「当たり前!そこまでしてこそクラウドへの愛が証明されるの!!それにACはもっかい7クリアしてから見るって決めてるの。」
「愛とか関係ないでしょ、ゲームなんだから。そんなんだから何時まで経ってもAC見れないんだよ」

作ったばかりの笑顔をしかめっ面に変えて、##NAME1##は友人の言葉に反論する。声もまた不服感たっぷりだった。

「関係ありますぅ!クラウドは脳内彼氏なんですぅ!」
「脳内ね……ホントこの子はイタイ発言ばっかりして。現実彼氏でも見つけようと思わないわけ?将来結婚出来ないんじゃない?」

##NAME1##はどうしてそこまで話が発展するんだと、ジト目で友人を眺めた。その眼に映る友人は緩くウェーブの掛った茶色い髪を指に巻きつけて##NAME1##を見返している。
これが俗に言う美少女というものだろうか。長年傍に居るからか、客観的に彼女を見る事が難しい##NAME1##だが、彼女の容姿については称賛している。大きな目やふっくらとした唇に通った鼻筋はとても綺麗だ。友達としても鼻が高い美人っぷりではあるが、##NAME1##にとってはそれは二の次であり、自分としてこうして一緒にゲームをしてくれる有り難い存在である。
自分はゲームばかりしていて、恋心に似た感情すら存在しないキャラクターへと向かっているのに対して、こんな自分の友人である彼女はしっかりと現実を見ていた。小学生高学年からずっと一緒に居る間、彼女は早い段階で異性との付き合いがあった。その内何人か、彼氏だと紹介されたこともある。それについても、少々冷たいかもしれないが彼女が決めたことだと思い、口を出さずにいた。彼女が悩めば話を聞くし、助けを求めれば全力で助力するが、結局のところ、気の強い彼女は##NAME1##を介入させる前に事を終わらせての事後報告が常であり、もう慣れっこになった頃にはこうやって割り切っている。友人は意志の強い子だ。親友だろう##NAME1##には彼女の決めごとに対する決意がどれ程かよく理解出来ている。下手に口を出すととばっちりが来るのも経験済みであった。
こう何年も友人関係を続けていると、お互いの距離というものがわかってくる。友人に対して、##NAME1##はあまり彼女の意志に突っ込むことは避けて、彼女からの報告だけに徹する。##NAME1##に対しての友人は、冗談混じりのおせっかいと、彼女の二次元への逃避癖に寛容な態度で接している。そうして積み上げてきた二人の関係は、少々厳しい言葉を飛ばしあっても揺るがないものであった。それが本気ではないと理解しているのだ。ともすれば、どちらかが間違ったことをしてれば正せるような仲でもある。

「そう言えばさー、岸田が」
「誰さ岸田」
「ほら隣のクラスの……こないだ髪の色抜きすぎて帰らされてた」
「ああ、ドンキーか」
「ドンキーってなに?」
「ヤツのカバンにドンキーコングのキーホルダーついてるの見たから。今度ドンキー好きなのか聞こうかと思っててさー」
「じゃあちょうどよかった!」


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