カツン、と軽快な音と多少の液体が溢れる音がした。何事かと思いキッチンから出れば、ナマエが机に突っ伏していた。回り込んで見れば、泣きじゃくったのか顔は真っ赤でかなりの量の酒を飲んでしまったらしい。
「なーにやってんだ?お前酒よえーだろ?」
「だって……だってぇ……」
「あーあーあー…床酒浸しじゃねーか」
「……ごめんにゃさい」
呂律が回ってない。吐きそうだと騒ぎださないのは不幸中の幸いと言ったところだが、酔っ払いが面倒なことには変わりない。酒に弱い自覚のあるナマエは普段は一滴たりとも酒を飲まないのに、一体どういうことなのだろう。メリオダスははて何かあったかなと今日の出来事を振り返る。今日は日中に聖騎士との戦闘があったぐらいで、夜は大繁盛だった。やはり特に思い当たることはない。
「うで……」
「!ああ、この傷のこと言ってんのか?大した怪我じゃ無いって言ったろ?」
ナマエが言っているのはどうやら腕の傷のことらしい。日中戦っている最中に、ナマエを庇って刃先がかすってしまった、メリオダスにとってはなんてことない傷だ。そんなことで酒に溺れてしまうのも、彼女らしいと言えば彼女らしい。
「……団長」
「ん?なんだ?」
「二度と、庇ったりしないでね」
「………」
「私の代わりに、傷つかない…で……」
好きよ。そう言い終える前に寝入ってしまったナマエをベッドまで運んだメリオダスは、キッチンに隠していたエールをひっぱりだして、1人酒盛りを再開する。
「傷つかないで、か……こっちの台詞だよなぁ。ま、安全な場所に置いて来なかった俺も俺だな。」
そう言ってメリオダスは、自身とナマエの酒の量を見て1人苦笑うのだった。