「今日はナイトをお連れではないのですね」
「コナンくんが居たら貴方とお話できないからね」

 貴方、なんでも盗めるってほんと?そう尋ねれば「何故そんなことを?」と当然の質問が返ってくる。私からしてみればとんだ愚問だ。私じゃ盗めないからに決まっている。倫理的な話じゃなくて、物理的に。

「ナイトの心をつかむのは、私よりも貴方の方が容易なはずですよ」
「どうしてそんなこと分かるの?」
「分かりますとも、」

 ずっとずっと見ていましたから。そういって怪盗キッドは優しい笑みを見せた。何を盗んで欲しいのか、どうして盗んで欲しいのか、彼には全てお見通しらしい。私もつられて笑ってしまう。
 そう、彼より先に愚問を投げたのは私の方。無茶苦茶なお願いだとは分かっていても。蘭とコナンくんの……いや、新一のやりとりを見ているのは耐えられなかった。

「怖がらなくていいんです、お嬢さん。答えは既に貴方の手の中だ。」
「私の、手?……あれ、これって(音楽プレーヤー?)」
「あとは貴方次第。おっと、お客さんのようだ」
「ナマエ、こっち来い!早く!!」

 息を切らして屋上に現れたのはコナンくん。驚いた私はうっかり再生ボタンを押してしまった。雑音まじりでもはっきりと誰だか分かる、愛しい声。コナンくんと服部くん?

『工藤お前も難儀なやっちゃのー。はよ告白してしまえ』
『バーロォ言えるかよ……ナマエの奴、俺が蘭のことすきだと思ってんだぞ?』
『だからこそや。早く誤解を解かんと他の男に盗られてしまうやろ。それともなんや、もう好きでもないんか?』
『……それこそねーな。俺はアイツのこと、』

 私は反射的に一時停止ボタンを押してしまった。色々な感情がふくれあがりすぎてキャパオーバーだ。完全に硬直した私をよそにキッドとコナンくんは再び追いかけっこを始めたようで、気づいたらコナンくんに連れられて工藤邸にいた。

「聞いたのか?つづき」
「きっ聞いてな「聞けよ、今。」

 この人今なんておっしゃったか?聞けと?本人目の前にして。せめて一人の時とかさ、他になかったのか他に。「早く聞け」と訴えてくるまっすぐな目線が、今の私には痛すぎる。ああもう本当この人は。

「……たらね」
「あ?」
「っ、元の姿に戻ったら直接聞いてあげるし言ってあげるわよ!」

 だから今は聞いてあげない。でもほとんど答え合わせをしたようなものだ。一瞬驚いた顔をしたコナンくん……新一の「そうか」は今までできっと一番優しかった。蘭と一緒に待っててあげる。だからはやく言いにきてね。


いいわけを濁して赤い糸でばいばい




ALICE+