「オイコラナマエ、てめーは何か酒の肴はねーのかぁ?」
pm3:00。すでに何次会かもわからない新年会。参加しているライブラメンバーは大半がリタイヤしていて、とうとうほぼ下戸である私までもがロックオンされてしまった。べろんべろんに酔った彼ら程面倒で質の悪いものはない。
「じゃあベーコンあげますよベーコン」
「おおこりゃあ美味そうな…じゃねーよ!話のネタ出せっつってんらよぉ」
最後の方言えてませんよ、なんて言ってもザップさんの耳には入ってないだろう。彼の背後には半笑いのレオナルドくん。貴様面倒になって押し付けたな。「許さん」と口パクで伝えればそーっと席から離れてゆく。後で覚えてろよ。
「番頭とは進展あったのかよ。」
「は?!何言いだすんですかこの酔っぱらい」
「半年経って進展無しってこたぁねーだろ。ガキの付き合いじゃねーんだからよぉ。」
「無いですよ、何も。」
「……それマジで言ってんのか?モノホンかお前?」
「っ……私だって嘘だって思いたいですよ」
「でも番頭が「はいちょっと黙りなクソモンキー。お前はこっち来い」
「あ、チェイン。」
「ごめんねナマエ、この汚物は私が預かるから。」
顔色、良くないわよ。と奥のベッドルームに促される。無下にするのは悪いし、私はお礼を告げて素直にベッドルームに向う。今日グラス半分も飲んでないはずなのになぁ。熱を持った頬にグラスを当ててみてみるけど、とっくにそれはぬるくなっていた。
あれだけホールにリタイヤした人が居たというのに、ベッドルームは無人だった。誰も運んでくれていないとは、ライブラらしいといえばらしいのだが。私は一番奥のベッドに腰掛ける。ザップさんに言われたことが頭の中で反響しか止まない。
(『半年経って進展無しってこたぁねーだろ。ガキの付き合いじゃねーんだからよぉ。』)
そんなの私が一番気にしている。でも彼のことだから、きっと大切にしてくれているのだ。私以上に忙しい人だし、我が儘を言って困らせるようなこともしたくない。理性と本能の間をふりこのようにいったりきたりする。そんなこんなで半年経ってしまった。
「気分はどうだい?ナマエ」
「うわああ!……あ、スティーブンさん、」
突然耳元に声をかけられて、あまりの驚きにグラスを落としかけてしまう。そんな様子の私をみてスティーブンさんはいつもの笑みを零す。いや笑ってるけど貴方の所為ですよこれ!(耳弱いの知ってるくせに!)
悪い悪い、と悪びれも無く言ったスティーブンさんは、グラスをサイドテーブルに置いてから、私に向き合う。
「ナマエもライブラにはいってそれなりに経つけど、相変わらず敬語が抜けないな」
「当たり前ですよ!年が近くなるわけじゃないんですから!」
「……年が近くなきゃ、駄目か?」
「へっ?あ、いやそういうわけじゃ……」
「年齢操作はどうしようもないけど、それ以外のナマエのお願いなら何でも聞いてあげるよ?ね。もうガキじゃないからね」
き か れ て い た 。
明日おそらく半殺しに遭うであろうザップに私は心の中で十字を切った。アディオス、クソモンキー。
ぎしり、とスプリングの軋む音が聞こえたベッドは、容易に私とスティーブンさんを包み込む。何よそ見をしてるんだい?と言ったスティーブンさんの、口調は優しいのに目が笑っていない事実に私はただただ笑ってしまった。
「ふふ、そういうところもすきですよ」
「ガキっぽい意地に君を巻き込むところが?」
「いいえ、とてもお優しいところ、です。」
「……詳しく聞きたいねえ?」
そういって私のリボンタイに手をかけた貴方の目はとても熱を持っている。初めて見たその目に少しだけ怖さを感じた。だけど大丈夫。だって、これから迎えるまだ知らぬ夜も、貴方との時間も、きっと、絶対に私にやさしいはずだから。