「ザップさんって、見かけによらず本命に対しては奥手ですよね」
「あンだよ喧嘩なら買うぞ」
「あら本当のことじゃないのザップっち」

 俺・姐さん・レオというわりかし珍しいメンツで、これまた珍しく姐さんの作ってきてくれた弁当にがっついていた。そんな最中突然さっきのような台詞をレオがぶっ込んできて、俺の咀嚼が一瞬止まった。再開させても尚動悸の速さだけは戻らなかった。

「つーか本命いるっつーのによく他の人と寝れますよね。流石SS先輩っすってあ!それ俺の卵焼き!」
「るっせーよ良いだろ俺の勝手だろうが!オメーは俺のかーちゃんかよ」
「でもあの子は良い気しないんじゃない?そんな奴に告白されてもとてもYESとは言え無いわよね〜」

 姐さんの言葉で俺の首がギギ、と音を立てて姐さんを見た。あの子ってのはもちろんナマエのことで、そんな奴ってのは、俺?つまり俺はYESを貰えないと?突きつけられた現実に再び俺の咀嚼の速度が低下する。卵焼きが甘いのかしょっぱいのかも分からない。

「あらナマエっちおかえり!ちょっとこっちいらっしゃい」
「みんなただいまーK・Kどうしたの?」

 先程まで話題の中心になっていたとは露知らずほわほわした笑顔で俺の隣に座ったナマエ。なあに?と好奇心旺盛に姐さんに尋ねる姿を見て、レオがニヤっとした。あ、やべえ嫌な予感しかしねえ。

「ザップさんがナマエさんのこと好きだって言ったらどうします?」
「ストレートかっ!!!もっと濁そうとか思わなかったのかっ!!!」
「やだなあザップさん!例えば、の話ですよ〜」
「そうそう例えばよぉ。ナマエどうなの?」
「へっ?わ、私?」

 ああ終わった。姐さんの例え話ですらダメージが大きかったのに、直接なんて聞いたらしばらく立ち直れない。聞きたくないはずなのに、奇跡的な確率でYESが返ってくることを期待して耳を澄ましてしまう。

「んー……その時になってみないとわかんな、い」
「………は、」

 返ってきた返答はYESでもNOでもなかったが、そんな顔を真っ赤にされれば期待をするのが男というもので、今すぐ押し倒したい欲求を抑えて俺はなんとか弁当箱を空にした。





 それからしばらくして姐さんとレオはミッションに出て行き、今この部屋に居るのは俺と、ファッション雑誌をめくっているナマエ。あとは奥の部屋にギルベルトさんがいるぐらいで、ほとんど二人きりのようなものだ。俺は意を決してナマエの隣に座り直した。

「ん、ザップどうしたの?」
「あー…あのよー……」
「うん?」

 やめろおおおお!!!さっきみてーな好奇心旺盛な目で見るなあああああ今から俺は別に楽しいことを言うわけじゃねえええええ!!いやレオや姐さんが見てたら楽しいのかもしれねーけど!!叫びたい気持ちを飲み込んで俺は再びナマエに向かう。

「あー……ナマエのこと、わりと好きだし、さっきの反応も満更じゃねーんだろ?付き合わねぇか?」

 ちがああああああうそうじゃねーよ!!!なんでスッと「好きだ」って言えねーんだしかも後半なんだよただのチャラ男かよいやチャラ男なのはなかなか間違ってないけど!!!

「い、いいけど……」
「………へ?」
「っ、だから付き合ってあげるって言ってるの!2回も言わせないでよ恥ずかし、わわっ!!ちょっとザップ!!」
「いーんだろ?」
「なんで付き合うイコール押し倒すなのよ!脳みその中身全部××かよ!!!」
「満更じゃ、ねーんだろ?」

 ナマエの鎖骨を人差し指で撫でながら耳元で息を吹きかけるようにそう言えば、一気に紅く染まるコイツの頬に俺の加虐心と性欲が加速していく。駄目だ、本当たまんねぇ。

 さっきまで脳内の片隅に辛うじて残っていた姐さんとレオへの感謝なんて、据え膳の前では欠片も残っちゃいなかった。あーまぁとりあえず、いただきます。


啄む幸せに




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