「ナマエ、ネクタイ外してくれ」

 一体この人は何を言いだすんだ。私は突然の申し出に数ミリにも満たない彼への警戒心を全開にして、申し出た彼―――スティーブンの首にひっかけられたそれ、ネクタイをじっと見つめた。

「何言ってるの?スティーブン」
「何も難しいことは言ってないさ。ネクタイを外してくれって言っただけだよ」

 いやだけって貴方ね。私が何故こんなに警戒しているのか分かってないでしょ?私は彼と一定の距離を保ちながら手を伸ばすか否か考えあぐねていた。なんせ彼が腰を下ろしているのは本当に一人暮らしなの?と言いたくなるような大きなベッド。明日はわりと重要なミッションを控えているから、ベッドメイキングまではしてあげたけどプレイングまで構ってあげられる程の余裕はないのだ。
 警戒心をむき出しにする私に待ちくたびれたのか、大きなため息を吐いたスティーブンはハンズアップした状態で「わかったわかった、何もしない。本当だよ」と言って私に早くネクタイを外すよう促した。

「……わかったわよ。何かしたら本当に怒るからね?」
「ああ、君が怒った顔じゃ猫も倒せないからね、大歓迎だよ、っと」
「あっばかちょっと!!」

 ネクタイを解いて抜き取る寸前。ハンズアップされていた両の手は私の脇の下へと差し込まれて彼共々ベッドの上へと放り出された。がっちりホールドされてしまって逃げ出そうにも動けば動く程ワンピースの裾が上がってしまって、その姿を見たスティーブンは余計に発情してしまっている。これはまずい。

「っ、明日ミッションでしょ?!!私も行くんだけど!!」
「それは奇遇だね、俺もミッションなんだ。しかも同じポイントが担当だ」
「いやいやいや奇遇とかじゃなくてさ。明日腰痛いとかホントシャレにならないんだけど」
「あはは、大丈夫だよ」

 俺一人で全部倒しちゃうからね?そうご機嫌に言い放った彼は鼻歌まじりに、私の背中のジッパーをゆっくり、ゆっくりと下げていく。なんともいじわるなことで。ああもうどうにでもなれ!!と諦めた私はふてくされた顔で顔を背けたけど、彼の大きな手で顎をがっちりと抑えられて彼にしては珍しく浅いキスが降って来た。

 されっぱなしじゃ悔しいから、解きかけのネクタイを掴んで私から深い深いキスをお見舞いしてやった。ミッションそっちのけでこんなことしてるスティーブンもスティーブンだけど、みえみえの罠に自らひっかかる自分も大概恋に落ちているんだろうなって思った。


つまるところはこのキスが答えです




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