「大問題だろ、それ。」
「あ、やっぱりですか……」

大問題、というのは、任務の際ザップと口喧嘩をしている間に1人ヤリ損ねてしまったことだ。あ、もちろんこの場でのヤるはザップ的な意味ではない。露骨にハンズアップをアピールしてくるスターフェイズさんに僅かながら苛立ちを覚えたけど、事実ミスには変わりないのだから仕方ない。私は簡単な報告を終えて、己の尻拭いをしに再び外出しようとし………たところをスターフェイズさんに肩を掴んで止められた。

「1人じゃ危険だろう。昼飯がてら俺も行こう」
「昼飯がてら……」

そんな軽くていいんすか。そんなことを訊いたところで軽くていなされて終わってしまうのは目に見えていた。私は気の抜けた声でうぃーっすと返答する。そんなだから任務でミスするんだぞと私の頭にチョップをかましたスターフェイズさんだけど、怒っているわけではないのだろう。含むような笑い声が背後から聞こえたから。

「車を出そう。ちょっと待っててくれ」
「……スターフェイズさん、なんだか雨の日に娘を送り出すパパみたい」
「………本気で言ってるのかい君。」
「あれなんか怒ってます?」
「別に?」

嘘つくなよ、絶対怒ってるでしょこれ。いつもだったら紳士的にドアを開けて車内に招いてくれるのに、今は運転席に座ったままよいしょ、とか言いながら伸ばした手で助手席のドアを開けてくれただけだ。いやまあ開けてくれただけだ紳士的だけども。そうなんだけども。
私ははいはい怒ってないんですねーなんててきとうな相槌を打って早々に車内に身体を滑り込ませようとした、まさにその瞬間。私の左手がくん、と引っ張られて思い切り席にダイヴして、その勢いのままスターフェイズさんに唇を奪われた。突然の事態に私はただただ口をぽかんと開けるしかないのだけど、スターフェイズさんは何事も無かったかのように車を緩やかに発進させた。

「君の言うパパっていうのは、娘にキスをするもんなのかい?」

ああごめんなさいもうパパなんて言わないからそんな目で見つめないで!


バニラの風が吹く




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