「いやあ……僕だとさ、釣り合わないと思うんだ。ナマエ可愛いし、綺麗だし。僕より強いから守るどころか守られちゃうだろーし。何より今はミシェーラの目を取り戻すことが一番だからさ。きっと悲しい思いをさせちゃうと思うんだ。だから………ごめんな」
もう何度も聞いた台詞を、何度も聞いたとおりに彼は繰り返した。まるで台本を無心で読んでるみたい。別に守って欲しいなんて言ってないよ。好かれたいのはレオだけだよ。どうして伝わらないんだろう。ミシェーラちゃんのことが大切なの、分かってるよ。力になりたいって思ってるもの。言いたいことが頭の中をぐるぐると回っているのに、口はちっとも回ってくれない。静かに涙を流して俯く私に何を思ったのか一歩分だけ距離をつめたレオがもう一度駄目押しで「ごめんな、ナマエ」と告げた。
ベンチに横並びに座っていた彼が去って何時間経ったんだろう。私は時計を見る気にもなれず、ただ影の長さに夕方かぁ、とぼんやり思うだけだった。そんな視線の先にふと影がかかる。顔を上げなくても誰だか分かった私は「奢るお金は持ち合わせてないよ」とぶっきらぼうに言った。
「フラれて落ち込んでる女に集るバカが何処にいンだよ」
「目の前に」
「ハッ。葉巻吸うぞ」
「どーぞお気遣いなく。」
どかっとベンチに座ったザップはいつものジッポで葉巻に火をつけて、いつもの紫煙を吹き出した。
「お前なんで諦めないワケ?アイツ以外にもいるだろおめーならよ」
「レオがいいの」
「……何回フラれてもか?」
「彼ずるいのよ。断りはするけど、決定打がないの。この先一生好きになれないとか、そういうのじゃなくて、ただ自分のことを過小評価してるだけなの。そんな理由で諦める女に見える?私」
「ぜーんぜん。むしろ食らいつくタイプだ」
「あー、早くバッサリ切って欲しいわぁ」
「………オラクソアマ、そろそろ帰んぞ。さみーったらありゃしねぇ」
「ザップは?」
「ヤリ部屋。」
分かりきったことを聞いた私がアホだった。私はべっ!と舌を出して、不器用なりに励ましに来てくれたザップにワンコインだけ放り投げて家路についた。
「………だってよ。お前いつまで逃げるワケ?」
「ザップさんには関係ないでしょ」
「これだからクソ陰毛はいつまでたっても童貞なんだよ」
「関係なくね?!!」
そんなに守れないことが怖えーのかよ。的を射た質問に思わず握った拳が固くなる。僕はザップやクラウスさんみたいに真っ向から戦う術を持ってない。守りきる自信がこれっぽっちもないし、ミシェーラと彼女を天秤にかけられたとき、どちらか一方を選ぶなんてこと多分出来ない。
だから、今はまだ、このままの関係でいいんだ。そう自分に何度も言い聞かせた。
(あと何度失恋したら幸せになれるんだろう。君も、僕も。)