平々凡々な刺激のないツマラナイ人生で満足している豚共は酷く愚かだ、そうは思わないかい?何度目になるかわからない聞きなれた質問に、即答で思わない。と答えれば、気でも狂ったのか楽しそうに笑うのだから、彼、フェムトの考えることは全く理解出来ない。いや、分かりたくもない。そもそもこの変人が何故私なんかに執着するのかが皆目見当がつかない。彼の言う所の平々凡々な人生を送っている凡人にはあまりにも高すぎるこのモル何とかって店に招待する理由も分からない。まあ考えるだけ、聞くだけ無駄だと思うので、私は素直に出されたディッシュにフォークを向けた。
「あ、このラム肉美味しい。タッパー欲しい」
「君こういう店でそういう事言っちゃうのかい?」
「だって美味しいし」
「……僕が取り寄せてあげるよ」
「え?なんで?」
「え?」
「え?」
「いやいや君ね……持ち帰りたいと言うから取り寄せてあげようと言ったんだよ。これを持ち帰った日には君、腹を下すよ」
「それだけ?」
「どういうことだい?君は肉は時間が経てば腐るということすら知らないのか?」
「いや……そうじゃないけど、」
駄目だ。今さっき考えるのを止めたはずなのにまた期待している。こんな超変人に、こんな超凡人が、下心を期待している。彼のことだから、私のことなんてオモチャのひとつ程度にしか思ってないはずなのに。なんだか悔しくて勢いよくステーキにフォークを突き刺した。そんな子どもじみたことをした罰か何か。跳ねたステーキソースは見事にワンピースに染み込んでいき、振動でナイフは床に落ちていった。あ。呼吸にも満たない声が出て、私はしばらく黙り込む。悲しみでも怒りでもない、それは無の思考だった。人間どうしようもないことに遭遇すると考えるのを止めるんだ。私はそっと突き立てたフォークを置いて、ナイフを取ろうと席を立ち屈む。ずっと下向きだった視界にはさらさらとした長い髪が視界に映り込んだ。私のではない、色素の薄い髪。
「君は、本当に見ていて飽きないね」
「……どーせ私は貴方のオモチャよ」
「いつそんなことを僕が言った?」
「顔がそう言ってるわよ。」
可愛くないなぁ。自分でもそう思う。早々にナイフを拾って席に戻ろう。そう思いナイフに手を伸ばしたところを、フェムトにがしりと掴まれた。驚いてつい視線をあげてしまった。あ、やばいこれ超怒ってる。
「君、僕と散々ディナーに行っておいてまだテーブルマナーも身に付いてなかったのかい?いいか?落とした食器は給仕が拾うんだ。自分で拾うことは自分の恥であり、同席者である僕の恥なんだぞ。ナマエ、君本気で僕の隣に立つつもりがあるのかい?」
「………は?」
「もしかしなくても君は自分がどれだけ浅はかで分かりやすい凡々人か分かってないのだな?君程度の好意、僕が気づかない訳ないだろう?」
僕の隣に居続けたいのなら、せいぜい頑張るんだな、凡人。そういった彼はいつもどおり気でも狂ったのか楽しそうに笑うのだから、彼の考えることが全く理解出来なくても、何故私なんかに執着するのかが皆目見当がつかなくても、きっと彼は私の側にずっといてくれるんじゃないかって、期待せずにはいられない。