「え?何って、お餅だけど……」
物珍しげに私の手元を眺めるライブラのメンバー。なんだか居た堪れなくて、中々焼けない餅に心の内で八つ当たりをする。そういえばここに居る中で日本生まれ日本育ちの純日本人私だけじゃん。切り餅を焼き始める前、杵と臼を使って男衆に餅つきをさせようと模索していたのだが、そもそも杵と臼が無かった。日本でもご家庭でお持ちの方は少ないであろうそれ。考えてみれば此処に無いのは当然のことだった。
さて、いくらライブラのキッチンが広いとはいえ、皆でかいのである。狭いわ圧力すごいわで火元のそばにいる私は汗が止まらない。唯一小柄で安心感のあるレオは、私に「お餅を焼いて、味付けは?」と尋ねてきた。実はそれも今抱える悩みの種のひとつである。
「最初はお汁粉……とか思ったけど、お雑煮もいいなぁって……餅焼きながら悩むことじゃ無いんだけどね」
お汁粉はレトルトのものを使えばさっさと出来るが、雑煮にするなら手順が逆だ。ならばいっそきな粉醤油とかでも良いかもしれない。 と、あれこれ恋しい味に想いを巡らせながらお餅を箸でつついた。
「ナマエ、君が持っている切り餅は今焼いているものだけか?」
「年末セールで私だけなら一ヶ月は余裕で生き延びられる数ありますよ〜クラウスさん」
数個入りのものを求めたが、お餅の需要が無いのかはたまた売れてしまったのか、私が買いに出た時点ではファミリーパックという独り身には刺さるそれしか残っていなかった。それでも多すぎる数に、一体何人家族想定なんだと、帰り道、重さのあまりため息をついたのは記憶に新しい。
そんな私の言葉を聞いたクラウスさんは、ふむと考え込んでしばらく、ギルベルトさんを呼んでから私に微笑んだ。
「君の買ったファミリーパック、是非私に買い取らせてくれ。それから味付けのレパートリーも君が知ってるものをギルベルトに伝えてくれないか?」
正しく鶴の一声。お餅の食文化に疎いメンバーは一気に湧いた。一部食費が浮いたー!など聞こえたが、大人なので聞こえないフリをしてあげよう。なんせ私は久々に誰かと食べるお餅に、喜びを隠せないのだから。