「宮ツインズ、ってああ、ツムサム?うん。え?そっくりだよねって?全然別物じゃない?」
何を当たり前のことを聞くのかとでも言いたげな顔で言葉を返していた彼女に、思わず顔を見合わせてから直る。話し相手は外部活の女マネのようだ。予定よりだいぶ早めの休憩に入った事を唯一知らない彼女は、いつものペースであれば休憩に入る数分前にジャグもドリンクも準備し終えている。今日に限ってはそれが叶わなかったわけだが。
張本人である治と侑をはじめとする部員一同は、鶴の一声ならぬ「北の一声」でドリンク運びを手伝いに行く様命じられていたのだが、思わずなりを潜めてナマエの会話の続きに集中した。本人達はさておき、周りからすればそれなりに衝撃的な回答だった。多少の差異はあれど、遺伝子は確かに同じものを持っていて、似たような行動を取る双子である。長年で培われてきたコンビネーションなんてまさしく2人が似ているからできる芸当であって、それをバッサリと彼女は「全くの別物である」と言い切った。本人達は勿論のこと、他の部員もそう結論づけたナマエの考えに興味があった。
話し相手の女マネは概ねこちらと同じ考えらしく、驚いた様子でうそやん、と返していた。それに対して標準語で嘘なんてつかないよ、とゆるく笑うナマエ。
「まあ、似てる所もあるよ?でも間違える事はないよ。初めて会った時もすぐ見分けられたし」
本人達は入れ替わりドッキリしたかったみたいで残念がってたけどねぇ、と、声色だけで、きっと微笑みながら言っているであろう事が容易に想像できてしまう。ていうかお前らそんなくだらないことしとったんか。そんな視線が数秒だけ双子に向けられるが、意識は再び外へと向けられる。
「具体的な違い?って言われてもなぁ。意識してるわけじゃないから別に……あ、空気は違うね。侑より治の方がおっとりしてるかも。侑はちょっと好戦的かな?どっちもプレイヤーとしては思考回路同じ。たまに単細胞かまして主将にシメられてるけど」
くすくすと思い出し笑いでもしてるのか、柔い笑い声が届いて思わず部員一同ほっこりした。強豪だ何だと言っても、所詮は男子高校生。女子のこういった会話には一喜一憂するし、きちんと食いつくのが十八番だ。
「おっとりとか女子か。ウケるわ」
「好戦的とかバレー以外何処で活かすねんツム」
「サムうっさいわ!」
「2人がうっさいわ、お前ら何団子になっとん?」
「げ、北さん……」
例外一名、名を北信介。部員達の不可解な様子を気にもとめず、漸く全て汲み終えたナマエの元へと歩み寄っていく。北さんに気づいたナマエはちょうど良い所に!と言わんばかりに先程自身が尋ねられた事を訊いている。北さんは暫し思考したのちに、何か納得したのかは分からないが、ああ、と小さく洩らしたのちに、此方には目線もくれずに「まあ苗字の言う通りやな」とスッパリと言い切った。そして北さんはけど、言葉を続ける。
「2人しておんなじ女子好いて聞き耳立ててる所はやっぱり似てるんとちゃうか?」
「聞き耳?」
「いや、こっちの話や。ジャグ、持ってくな」
「あ!予定より練習終わるの早かったですか?すいません、ここ笛の音が届かなくて……ってあれ、みんな何してるの?」
とてて、と北さんの後を追うように体育館に戻ってきたナマエは、籠いっぱいのドリンクから一本を差し出しながらこてん、と首を傾げて問うてくる。かわい。じゃないわアホ。すっかり次の作業に移ってしまった小さな背中を目で追いながら、背後に感じる視線をひしひしと……いや、グサグサと感じていた。北さんなんて爆弾を残していったんや、いやあれわざとか?それとも素で言ったんか?どっちみちタチ悪すぎるやろ。各々が思っていた言葉をぼそぼそを言い合う中、宮兄弟だけが互いに睨みを利かせて牽制しあっていた。
「オオン?ナマエには興味ないんちゃうかったか?サム」
「本人に直接キッショとか言ってたのはツムやで」
「はあァ?あんなの戯れにしかならんわどアホ」
「好きな子揶揄うとか小学生やん、ダサツム」
「喧嘩する元気があんなら外周増やして平気やんな?」
「「北さんご慈悲を!!」」