久々に訪れた部屋には「さよなら」とたった四文字、綺麗に書かれたメモが1つだけ。あとは痕跡一つ残さず彼奴は消えた。付き合いだしてから幾度と繰り返してきた浮気やら何股だから、また今回も許すんだろ?と奢った結果がこれだ。残ってない筈の温もりを求めて、枕も掛け布団も何も残っちゃいないベッドに身を沈めてみる。ただのスプリング音すら、虚しい。
俺の所為じゃねぇ。彼奴が、俺が何度「過ち」を繰り返しても何事も無かったように無表情で振る舞うから悪いんだ。なんてこと無いと思ってたんだ。何で何も言わなかったんだよ。何でだよ、何で………
何で、だと?
俺は自分の思考に動きが止まった。もしかして俺、言って欲しかったのだろうか。行かないで、と。あまりにも女々しい。部屋に取り付けられた鏡にはなんとも情け無ぇテメーの顔が写り込んでいた。
気づいたら俺は部屋の鍵もかけずに走りだしていた。乗ってきたランブレッタのことなんてもう頭のどこにもなく、ただお前を探しに走りだしていた。ああ今すごく彼奴が恋しい。都合が良すぎると笑ってくれていい。それでもいいから、もう一度俺の前で笑ってくれ。
いつもの待ち合わせ場所で、待ってたんじゃねーかと期待してしまうほどに、いつも通りのお前が座り込んでいた。俺は此奴に合わせて屈んで、情け無ぇほど震えた声で、らしくねぇ縋るような台詞を吐いた。
「俺バカだからヨォ、こうやって行動されるまで、わかんねーよ……どうして欲しいか言えよ。どうするかは俺がちゃんと決めっからよぉ……だから、だから………お前がどう思ってようと、俺は……」