年の近い者が少ないエリスちゃんは、しばしばボスに頼んで任務と称して年の近い私を遊びに巻き込む。両の手にぶら下がった紙袋に流石の私も溜息が出た。それぞれ可愛らしいプリントがされたそれを、こんなに大量に見るのは一体何時振りだろう。ああまた溜息が出た。
「ちょっとナマエ遅いわよ!もう、帰って早速着てもらうんだから」
「エリスちゃん、だから私着ないってあれほど言って」
「駄目駄目駄目!!絶対着るの!命令!着て今日こそ彼を振り向かせるのよ!!」
「えー……」
その彼は既に私に振り向いてるのですが。彼女曰く、日頃の私達のやり取りがとても恋人同士のものでは無いという。そりゃそうだ、仕事中だもの。でもどれだけ説得を試みても、このお姫様は首を縦に振らなかった。しかもボスに泣きついて任務と称して私とこうしてショッピングに来ている。買い物を済ませ車に戻って来た私達に、デレデレの表情で手を振っているボスに腹がたつ。こんなの職権濫用だ。
▽▽▽
結局その後更に4店舗めぐりようやっと帰路(と言っても向かったのはボスの部屋)につくことができた。ぐったりした私を他所に、エリスちゃんは買って来た服をとっかえひっかえ私に着せていく。エリスちゃんの気が済んだ頃、既に時計の長針は二度目の12を指していた。
「リンタロウ!!彼を呼んで!!」
「げっ、ここに呼ぶの?いいです勘弁してください」
「せっかくだから見せようよナマエちゃん〜?あ、噂をすれば」
内線に応答したボスは満面の笑みでこの部屋唯一のドアを指差す。入って来た彼ーーー太宰治は何のことかと珍しく目をぱちくりさせている。これはレアなものを見せてもらった。もういい、充分だから帰らせてくれ。
「森さん今日の任務の報告に……これは?」
「可愛いだろう?幼女が2人」
「いや、彼女は幼女と呼ぶにはいささかアウトな気が」
「治、喧嘩なら買うぞ?」
「その格好で喧嘩は勘弁したいなぁ」
似合ってるよ、とまるでこの紅茶美味しいね、と同じ様な軽やかな口調で言ってみせる治に、エリスちゃんは不満気だ。
「ちょっと!他にもっと言うことはないの?!」
「他に、とは」
「素敵だね、とか君が一番、とか毎朝味噌汁を作ってくれとか」
エリスちゃんが怒りか焦りか、よくわからない感情から訳わからないことを口走り出した。なんだこのやり取り。そしてそのハハーン?みたいな顔やめて治。言い出したの私じゃないからね。ぞわり、と嫌な予感がして間も無く、口を開いたのは治だった。
「ここだけの話、彼女の照れた顔は私の特権なので」
どろどろになるまで愛でるのは、二人きりの時だけです。そう言い残して治は部屋から出て行った。ドアが閉まったのを見送ったボスとエリスちゃんの視線が、茹で蛸よろしく紅く染まった私の顔に集まる。ああもう今すぐ抱きしめにいきたい。