Case.12
「みんな良かったね、半獣っていうのかな……とにかくかっこいいよ」「ナマエお前って奴は……!」
「ナハハ、本当におだて上手だなぁ」
「医者先生が来てくれてマジで助かったなぁ俺たち!」
「補助してくれたナマエちゃんにも感謝だ!」
「……暫くは体幹が不安定だ、安静にしてろ」
元々囚人達を収容していたこの施設には、かつての事故によって多くの負傷者が出ていた。大半のものは命を失い、生存しても五体満足は叶わなかった。
しかしキャプテンの能力があれば、健康な部位さえあれば『付け替え』が出来る。それはある意味で他者から健康を奪う行為で、あまり気乗りのするものでは無かったが、囚人たちにとっては失くしたものが形を変えてでも返ってきた事が嬉しいようだ。飛ぶ者跳ねる者走る者泣き喚く者、三者三様に喜びを表していて、然程長い付き合いではないにしろ、私の中にも嬉しさが込み上げてくるものだ。
「暫くは朝と夜に検診、お前に任せて良いか」
「嫌と言ってもやらせる顔をされてますね」
「分かってるじゃねーか」
悪どい笑みを浮かべたキャプテンは、鬼哭を担いで部屋を出て行った。不服ではあるけど私が検診をする方が理に適っていて、というのもキャプテンはまだパンクハザードに来たばかりで顔と名前が一致しないのだろう。いちいち照らし合わせるよりは、私がさっさとやってしまう方が良いと思ったのだろう。
(キャプテンの狙いは何だろう)
仇敵ともいえる存在の配下に(間接的とはいえ)ついてまでこの島でなさねばならないこと。それもクルーのみんなは既に別の島へと向かっているらしい。キャプテンの意図も、それに対するドフラミンゴサイドの動きも不明瞭。分からないことが多すぎるうちは大人しくしているのがベターだろう。
なんて考えていてもそうはさせてくれないのは、新世界たる所以だろうか。私の安寧は数日足らずで見慣れた麦わら帽子の彼に壊されるのだった。
「サムライ?」
「ああ、囚人どもが騒ぐからバラしてきた」
「なんで此処にサムライが……」
優雅に脚組みをしてるが言ってることは中々物騒だが、なんて事なさげに報告してくるキャプテン。(現在は私がドフラミンゴ直下の部下だから、雇われのキャプテンの方が立場は下なのである。)
密入国の経路は果たして何処だろうか。今はこの島の守護を担う私はここ数日の船の出入を思い返して唸る。とりあえずその後の様子を確認すべく見回りに行こうと刀を手に取ろうとした瞬間、それを阻むように手を掴まれた。今の貴方の目は出来れば直視したくないのに。
「オマエ、"アイツ"の部下だと本気で言ってるのか」
「……………」
「オレはオマエを手放した気もあんなクズにくれてやる気も毛頭無ェ」
「黙れ、今の私はあのお方の支配下だ」
私の手を掴んでいた手はいつのまにか私の頭を軽々掴み上げて鉄壁へと強く打ちつけた。逃げない衝撃に頭がガンガン鳴り響く。嘘が下手にも程がある。キャプテンは私の言葉が嘘と見抜いた上でこんなにも怒っているのだ。手を離されずるずると身体が壁に沿って床に沈む。唇を噛み込む"らしくない"キャプテンに、私はまだ少し浅い息で言葉を紡ぐ。
「その感情は、貴方にとっての弱味になりますよ」
だから私のことは捨て置いて、どうか悲願を叶えてください。ただひとつ願うなら、命は必ずベポ達の元に辿り着いて欲しい。この気持ちに貴方は気づいてくれてるかな。さぁ、果たしてどうなるかな。