Case.6
「久々の栄えた島だね!ナマエ、買い物行くよ!可愛い服いっぱい見てやるから!」「イッカクありがとう、でも私暫くは出禁だから」
「あーキャプテンか。……うん、ちょっと待ってて」
そう言って測量室に来た勢いのまま再び出ていったイッカクの後ろ姿に、ベポと私は首を傾げた。あのキャプテンから許可が降りるとはとても思えないが、一体何をするというのだろう。そうこう考えてる間にも賑やかな足音が廊下から聞こえてきて、振り向けば丁度再び扉が開け放たれたタイミングだった。
「シャチとペンギン?」
「オレらと一緒なら出ていいってよ」
「そゆこと!オレとシャチがボディガードだぜ」
「……キャプテンよくOKしたね」
「そりゃ、ずっと引きこもってたら気が狂うでしょ!我慢ならず無断で出てかれるよりマシですよって話したら即ペンシャチ呼んでくれたわ」
「イッカク……」
ペンギンとシャチは久々の島で船番にならなかった事で喜んではいるが、私としては申し訳なさが少しだけ勝っていた。巻き込んでごめんなさい、でも元を辿ればキャプテンのせいなんだよな、と考えに耽っているうちに、女子部屋へ連行されいつものツナギからふんわりとしたワンピースに着せ替えられ、仕上げに顔隠しの意味も込めてカンカン帽を被せられた。久しぶりに履いた少しだけヒールのあるサンダルも、何処か嬉しそうに見える。
女子部屋を出るとラフな服装に着替え終えたペンシャチが廊下に凭れて話していたが、私の姿を見て話題はすっかり其方にシフトしたようだ。些細なことでもベタ褒めしてくるのは昔からなのですっかり慣れてしまったが、久しぶりのことで少しだけ照れたら、また誉め殺しをいただいた。これは最早シスコンの域だ。
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少しだけ遡った船長室。イッカクの申し出で呼ばれたペンギンとシャチは、ローからナマエの護衛を任された。数少ない彼女の加入時期に居たクルーに任せるとは、相当な念の入れようだなと2人は感じていた。ナマエの言う通り、あの場でリスクを冒す必要は無かった。しかしキャプテンは命じた。それは先を見越した上で、必要だと思ったから海軍の元で身につけた六式を解禁させたのだろう。
ペンギンは普段のツナギは腰回りまで履いて結び、シャツを替えてジョリーロジャーを隠す。シャチはズボンも履き替えたようだ。嬉々と着替えに勤しんでいるであろう女子部屋に視線を送りながら、重たい口を開く。
「キャプテン、七武海加入の為にナマエのことワザと見せたのかな」
「バッッ………シャチお前怖いこと言うなよ!!キャプテンが引き渡すって言うのか?ナマエを?」
「そこまで言ってねーよ。ただ、向こうもわざわざ殺すなって懸賞金かけてる訳だろ?一種の脅しにはなるだろ」
「海軍相手に?」
「海軍相手に。」
いつもなら駆動音や水の音が響く廊下も、島に着いた今だけは寂しいほどシンとしていた。ナマエを発見した場に唯一居合わせたペンギンは、シャチよりもほんの少しだけ思い入れがある。その場で対処できるものはひと通り応急処置を済ませたが、泥まみれのまま放置されていた傷は化膿している箇所もあって、今思い返しても酷い扱いだったと反吐が出そうになる。今の彼女が傷ひとつ残らず綺麗なのは、ひとえにキャプテンの丁寧な処置、それも時間をかけた湿潤療法を選んだことにあるだろう。そこまで入れ込んでいるナマエのことを、果たしてキャプテンは手駒のように使うだろうか。
「……俺は、ちげーと思う。新世界に向けて、手札隠したままでやってけるほどこの先甘くねぇって、生き残って欲しいから解禁させたんだって、俺は思いたい」
「ペンギンお前……」
「ま!"俺たち"が守るから関係ねーけどな。な!シャチ!!」
「おうよ!ったりめーだ」
そんな話をしていると女子部屋の扉が開いて、普段は滅多にお目にかかれない、ふわりとしたワンピース姿のナマエ。そこからの話題はすっかり可愛い妹分のファッションに掻っ攫われてしまった。