Case.7
「ナマエかわいい!やっぱオシャレさせ甲斐あるわぁアンタ」「こっちのボトムも良くね?」
「いや俺の見つけたやつの方が合うだろ!」
もう何軒目か分からないブティックで変わらず嬉々と私に服をあてがう三人に苦笑いを浮かべながらふと意識を店外へと向ける。その時に違和感を感じた。いや、違和感なんてもんじゃない。何故こんなに近くにいることに気づかなかったのだろう。私も久々の外で浮かれていたのだろうか。なんにせよ失態以外の何者でもない。慌てて三人の手を取り船へと戻ろうとする。
「お、おいっどうしたんだよ?!」
「何でか分からないけどっ、海軍がっ来てるっ……それもかなりの数でっ!」
切れ切れになりながら吐き出した海軍という言葉に特にペンシャチは視線を鋭くさせた。とにかくこの事をキャプテンに伝えなくては。焦る気持ちをなんとか抑え込みながらみんなより小さなコンパスを必死に掻き回す。その時、一瞬の無重力と優しい温もりを感じて慌てて私を"抱えて"いる主へと視線を向ける。
「きゃっキャプテン〜〜…!」
「出航するぞ、他の奴らも戻ってる。準備しろ」
「待って、その前にやって欲しいことがあるんです」
船内へと戻ろうとするみんなが未だ甲板に残る私を見つめる。考えたくなかった可能性、けれどそれ以外に考えようがなかった。
「私に異物がないか、スキャンしてください。出会った頃より精度が上がってるから何か引っ掛かるかも」
「………」
眉間の皺が深まったキャプテンだったが、スラリと抜いた鬼哭を私にかざす。するとやはり不安は的中したのか、有無を言わさず展開されたROOMの中で私は一刀両断にされた。摘出された異物は小さく、しかしこれが何か予想するのは容易かった。今まで捕まらなかったのが奇跡だ。というか、そもそも生きていると思われていなかったのだろうけども。
「追跡チップ、か。海軍も大概キナ臭ぇな」
「これを島に置いて出てけば暫くは時間稼げそーッスね」
「……よし、船を出す」
キャプテンの手から島へと放られたチップが地面につく前、そしてポーラータング号が潜水を始めたその瞬間。私は宙を舞いそれを拾い上げて窓越しにキャプテンを見上げた。うっすらと戻って来いと怒鳴る声と、ドアを開けようとするキャプテンを必死に止めるペンシャチ。思わず出た私の言葉は、果たしてドア越しの口パクでもキャプテンに伝わっただろうか。揺れているのは私の瞳か、それとも。
『あいしてる』
混じり気のない無垢な気持ちだけで生きていけたらどれだけ良かっただろう。私はいつまであの白い塔に囚われているのだろう。チップを壊れないようにそっとポケットに入れて、愛刀と共に海軍の着いている船場へと向かった。
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「キャプテン落ち着いて!今ドア開けてもアンタ溺れるだけでしょ!」
「そうだよぉ!ナマエのことはオレも心配だけど、一旦浮上場所は変えないと」
「……クソッ!!」
この先の事を考えて行動していたつもりが、まさかこんな結果を招くと予想が出来た範疇だったじゃないかと己を責める。ただでさえ自己犠牲を厭わない奴が「自分のせいで海軍が来た」なんて思えば、どんな行動に出るかなんて火を見るより明らかだ。俺の心中を察したクルーは皆直ぐにでも再浮上出来るよう忙しなく動いている。ならば俺がする事はひとつだけだ。
「絶対にお前を置いてなんかいかねェ、そんなこと許さねェからな……ナマエ」