普段の私ならご縁が一切無いような煌びやかなドレス。背中のジッパーが噛んでしまったらしく最後まで上げられない。ふるふると震える手を懸命に伸ばすも虚しく、指先が掠めるだけ。

「ギルベルトさぁーん……て誰も居ないのか」

 珍しく画面にかぶりつく兄も居ないとは、今日のライブラは大変忙しいらしい。あちゃー、と漏らせばふん、と鼻を鳴らした音が背後から聞こえた。素直に振り向けば、そこには今帰社したばかりであろうザップ・レンフロ。

「おかえりザップ。これやって」
「あ?お前それ誘ってんのか?」
「しね。ジッパー下げるんじゃなくて上げろっつってんの」

 秘密結社ライブラ。ここは世界の秩序の均衡を保つために日々秘密裏に活動している。そこそこいる私も未だにその規模や全体像は見えてない。見る必要もないのだが。

「へーへー上げりゃいーンだろ。にしても何だよこのドレス」
「仕事。どっかの馬鹿猿と同類らしいから、私が囮になるんだって」
「……それよく旦那が許したな」
「ううん、言ったのはスターフェイズさん。兄さんは聞いてないんじゃない?」
「マジかよ。作戦後やべーな」

 心配性だからな旦那は。そう漏らす彼の顔だって大概だ。素知らぬふりをしてるけど、心配してくれてるのは長い付き合いで分かってるつもり。

「つーか囮ってなんだ、誘惑でもすんのか?脱ぐなら俺も観に行くぞ」
「お前を信じた私が馬鹿だったやっぱりしんでくれ。」

 数時間後作戦を終えて帰社したクラウスたちは、血を抜かれて半殺しに遭ったザップを発見したとかどうとか。

やさしいあんたが嫌いでした

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