「ねーねー、どうなのよぅ?好きだ、って。言ったのぉ?言われたのぉ?
アロハ!ボンジュール!俺だよ☆じゃなくてこんにちは、常にピンチと書いてジャッ○バウアーと読みます。ナマエです。突然で申し訳ないのですが、今期最大のピンチです。いや人生最大のピンチかもしれません。具体的には割愛しますが、ざっくりいうと偏執王アリギュラに監禁されてます。あと少しで2日目を終えるところです。
正直に言います。フェムトよりタチが悪いですこの人。彼女曰く私の色恋沙汰をフェムトから聞き(何で知ってんだ。)、是非自分も聞きたいと監禁した次第だそうです。監禁ってそんな気軽にするものだったっけ。嘘でしょ。
「ナマエわぁ〜、あのぼっちゃんの仲間のこと好きなのぉ?変わってるわねぇ」
「お兄ちゃんのこと?それ言ったら私は彼の妹だし仲間だよ?」
「ぷっ……まだそんなこと言ってるのかい?ナマエ」
「げ、フェムト!」
「あーちょっとちょっとぉー!レディの部屋入る時はノック、常識でしょぉ」
「もちろんしたさ!というか紅茶持ってこいとかパシっておいてそれは無いんじゃないの?……ああナマエ、いいように着せ替え人形にされてるね」
喉から楽しげな音を鳴らしたフェムトは私が先ほどまで着せられていた数々の高級ドレスを広げてみせる。ここに来てからと言うもの、冒頭の質問か着せ替え人形をさせられるかの2択を延々繰り返している。幸い食事はちゃんと出てるしぶっちゃけかなり美味しいけど、恋愛トークを迫られるのは勘弁して貰いたい。
「で、で、で!結局どっちなのよぅ!」
「……告白されました」
「やだー!!ちゃんと言えるじゃなぁーい!で、今はどうなのぉ?」
「いやどうなのかと言われましても何も……」
「……うそぉ。両想いなのにぃ?」
まじかよ、と言いたげな目線に冷や汗がつう、と頬を滑る。いやいやそんなの私が聞きたい。両想いなのに?何で浮気をするんだって。ボディタッチを禁止にしたとはいえ、あれだけおおっぴらに浮気されるのは流石に堪えるものがある。
「言えばいーじゃなぁーい?行かないで、ってぇ」
「言えない、よ……」
ナマエが堕落王と偏執王に連れ去られました!というレオの電話に、またかよ!!!とツッコミをしたのはきっと画面の前のお前も同じはずだ。俺はらしくない心配と呆れで痛む頭を抑えて執務室へのドアをくぐる。既に他のメンバーは揃っていて、全員の視線が俺に向いた。
「遅いわよ猿。あんたの子でしょ?自覚無いからまた連れ去られたんじゃ無い?ああ、自覚があったら浮気なんかしないか」
「あンだと犬女ナカすぞテメエ!!!」
ふと視界の端でブン……という機械音が聞こえた。一斉にテレビへと視線が集まり、そこには偏執王アリギュラと、何故かフリルの効いたワンピースを身に纏ったナマエが映っていた。アリギュラは一瞬こちらと目が合ったがナマエはカメラに気づいていないのか俯きっぱなしだ。一先ず無事そうで安堵したのも束の間、アリギュラの発言に場が一瞬にして凍りついた。
『言えばいーじゃなぁーい?他の女のとこなんか行かないでってぇ』
『言えない、よ……』
『なんでぇ?両想いなんでしょお〜?』
『そうだけどザップ、知ってるだけで2人も愛人いるし……』
『でも理由があるんでしょぉ?いっそナマエから襲っちゃえばぁ?』
アリギュラの一言にぶっこむわねぇ……と感想を漏らす姐さんに、なんだただのガールズトークか、と笑う番頭。そこかよ、ツッコむとこそこかよ。犬女には「あんたでも襲わないことあるんだ」と化け物を見るような……おいレオお前もか。そんな目で見るな。俺が視線から逃れようと画面に向き直ると、スピーカーの無機質な音はなかなかショッキングなことを伝えた。
『ザップの愛人さん達みたいに綺麗じゃないし……幼児体型なの分かってるから幻滅されそうだし、そもそも自分からとか無理だし……!』
……は?ボディタッチ禁止って俺の所為かよ!!!全員からの痛い程の視線に我慢ならねえ俺は「探しに行く!」と吐き捨てて執務室を出た。あそこにいたら死んじゃう。誰が?俺が!
「ザップっちも健気というか、ナマエっちのこと大事なのねぇ。なんだかんだ言って!」
「あ、そのことなんスけど!とうとう付き合いだしたらしいっすよ」
「ほう、やっとか。でもそうだとして何で俺らに報告して来ないんだ?ナマエのやつ」
「多分交際3日目にして浮気を目撃したからですよ」
「「「あーなるほど。」」」
「ナマエはさ〜ぁ、他の人にしよう!って思わないの?コイツにしちゃえばぁ?」
「えっ……フェムトに?」
「いや僕の趣味じゃないから遠慮したいね!見てるぶんには非常に愉快だけども!」
「即答かよ!乙女心分かってねーな!!」
「あっちょっ、アリギュラ痛い痛い!」
当事者を他所に盛り上がったかと思えば喧嘩し始める2人に苦笑が漏れる。確かにそう。何故私は彼に別れたいと言わないんだろう。浮気しても尚1番は自分だというおごりがあるのかもしれないな。私は落ち着こうと紅茶をぐいっと飲み干した。……あれ、なんだろうこのふわふわした感じ。頭の中が霞みがかっていくような……
「ナマエ、今日はとっても楽しかったわ。じゃあ、
ま た ね?」
「あり、ぎゅら……?」
視界の端で愉快愉快と言いたげなフェムトが紅茶の注がれたカップを揺らす。ああなるほど。盛られたのか……私、は……………。
「アンタがぁ、ナマエの彼氏ぃ?」
「……ナマエはどこだ」
ナマエの捜索に行こうとランブレッタのキーを回した時、先程まで電子音混じりに聴いてた声が背後から声をかけてきた。俺はジッポを手に取ろうとしたが、偏執王は「やだぁ戦う気は微塵もないわよぉ」と不機嫌な声で言う。ふと鼻をかすめた香りに俺は警戒する間も無く振り返った。
アリギュラの側には堕落王フェムトと、ソイツに横抱きにされたナマエの姿。ナマエ!と叫んだが、眠らされているのか起きる気配は微塵もない。
「わ、すご〜い怒ってるー!」
「アリギュラ!だから僕は行かないって言ったんだ!見たまえよ、彼氏さん怒ってるじゃないか」
「うふふ、面白いわぁ。浮気してるくせに怒る権利あるのぉ〜?」
「……何が言いてーんだよ」
この子が夜中に外で泣いてたのよぉ。だから攫っちゃった。その言葉にナマエが行方不明になった日のことを思い出す。確かにその日はミランダの家に向かった記憶がある。
「2人で居るのを見てたのか……」
「私たちこの子をとても気に入っているの。次泣かせたら二度と返してやらないんだからぁ〜」
そう言い終えるまえに吹き出した煙幕で俺は視界が真っ白になった。落ち着いた頃には駐車場には俺と未だ眠りについているナマエの2人だけ。
「おらナマエ起きろおら」
「びゃっ……ちょ、ほっぺ引っ張らないでよ」
「起きたか」
「うんごめん、お騒がせしまし……」
抱き込んだナマエの身体は本当に小さくてやわっこくて、気をつけないと壊してしまいそうだ。おずおずと俺の背中に回されたナマエの両手にふ、と笑みが溢れた。
やっと想いを伝えたあの日、ナマエの奴から出た唯一のルールが「ボディタッチ禁止」だった。今思えば何故あの時俺は理由を聞かずに1人不貞腐れて浮気なんかに走ったんだろうか。正直俺がお盛んなのは今までもこれからも変わらないし、性別が変わったとしても変えるのはかなり難しいと思う。だから、いわゆるそういう行為を出来る関係になったのに拒否されたのはなかなかしんどかった。でもナマエはナマエなりに考えた末のことだったんだろう。
確かに愛人関係はこう……ルックスとかを重視する野郎もいるかもしれないが、恋人となれば別だ。ただ2人っきりの夜、ベッドの上で交われるだけでこの上ない幸せだ。つーか両思いな時点で幼児体型とか関係ないから好きなんだと伝わらないもんなのか?俺はよく分からない。
分からないからこそちゃんと言えと思うし、言えるように俺も聞いてやろうと思う。
「……心配したんだかんな。」
「!!……ごめんね、ありがとう」
お前から漂う優しい香りに、お前のくびれた腰に、見た目以上にある胸に。俺がしょっちゅう発情していることなんて、まだ気づかなくていいから。(今はただ側に居てくれと願った。)
不埒なあなたでもいいよ