「ナマエのフォローはそうだな……よし、ザップに任せようか」
「ハァ?!!ちょっと待ってくださいよスターフェイズさん!なんで俺がクソアマのお守りしなきゃなんねーんすか!!」
「そんなこと言ったって仕方ないだろう。ブラッディ・バンク発動中は殆どその場を動けないし、1番血を無駄に消耗するバカが遠いと血を送るのにも負担が大きいんだ。お前がフォローに当たれば全てが効率よく治収まるだろ?」
「ざ、ザップ………」
「ああン?なんだよナマエ」
「ご、ごめん、なさ……ぃ……」

謝罪の言葉は尻すぼみに消えていった。レオに言ったら信じられないと言われそうなほどに、当時のナマエは気弱な性格だった。多少口は強かったが、今ほどではない。戦闘任務以外では殆ど旦那にくっ付いて行って、ブラコン丸出しのクソガキだった。
俺がコイツを好いたきっかけが驚くことに一目惚れってやつで、恋に落ちた理由なんてひとつも思い浮かばなかった。むしろこの頃まではうぜー、なんでこんなやつなんかを?って思うレベルで割とガチで嫌いだった。嫌いなのに、話せば心臓がうるせーし戦闘になれば守りてぇと思うし、わけがわかんねぇ。当時の女共には「恋なんてそんなものよ」と笑われて、これまた不愉快さに拍車をかけやがった。
結局冒頭のやり取りは、弱った様子のナマエに根負けした俺がフォローに入ることになった。





「ザップ、まだ怒ってる?」

そして迎えた任務当日。後衛の配置についた俺とナマエは息を潜めて物陰に隠れていた。そんな中、このバカは囁くようにそう訊いてきた。

「俺がいつテメーに怒ったんだよ」
「な、なんとなく怒ってるのかなって……思って……」
「あーうぜー、これだから気にしー野郎はうぜーなぁ」
「ご、ごめん……あ、ターゲット来た」
「………おい、前衛動いてねーぞ」

本来なら前衛とターゲットが衝突して戦闘が始まってから参戦する算段だったはずが、ターゲットは何事もなかったかのような涼しい顔で俺たちの隠れる物置を横切っていった。緊張が走る中、ナマエの通信機から一本の連絡が入る。

『前衛が目に見えない何かに捕らえられた!緊急出動だ、後衛陣でターゲットを追跡してくれ!!』
「追跡だぁ?戦闘してしょっぴけばいーじゃねーか、よっ!!」
「待ってザップ!だめ!!」

勢いよく飛び出した俺は焔丸でターゲットのガラ空きの背中に襲いかかる。そしてこの数秒後、その判断が如何に甘かったのか、前衛が何故そんな指示を出したのかを理解することになる。

「な、なんだこりゃあ……!う、動けねぇ」
「ザップ!」
「バカ野郎こっち来るんじゃねー!!戦えねーやつはすっこんでろ!!」
「でも………っ!!!」
「おやおやお嬢さん、ここは貴方のような可憐な方が来る場所ではありませんよ?」
「ッ、ブラッディ・バンク!!!」

技名を叫んだナマエは歪んだ顔を見せて大量のー相手から吸収し損ねた血ーを吐き出した。相手の血に適応出来なかった時のペナルティだ。そして当時のナマエが血に適応出来ない数少ない相手。それは………

「血界の眷属……!!おいナマエ逃げろ!!」
「……ザップ、ごめんね」
「何謝ってんだいいから早く………!!」
「あのね、私ね………」

ザップを置いて逃げる勇気なんて持ち合わせてないんだ。そういってパトリックから受け取った銃器を構えたナマエの右目からはひと筋の涙が流れていた。
そしてここから始まるのは、俺とナマエ、そしてマスターしか知り得ない悪夢のような話だ。

流れる涙とひきかえに得たものは

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