「ザップ!状況を教えて」
「クソ新人の持ち込み企画で旦那が負傷、俺たちは猿を追うのが仕事だ」
「その新人くんは?」
「さっき吹っ飛ばされた時にどっかいった」

 そんなテキトーでいいんだろうか。問うてる暇があればいくらでも聞いたけど、次のゲートが開くのはもう間も無くでそんな猶予はゼロ。私は輸血の準備を済ませてから出来るだけ巻き込まれないよう、ザップのランブレッタに乗って距離を置く。ザップの炎に巻き込まれたらたまったもんじゃないからね。
 私の手袋には僅かだが針が仕込まれていて、両の掌を合わせると傷をつけることが出来る。絶えず流れ出る血はそのまま一直線にザップの元へと届く。若干くらついたのは、恐らくここ連日この能力を使ったからだと思う。
視界がすっかり霞み、視覚的に確認は出来ないけど、陽気なザップの声と知らない(多分新人くん)声が聞こえるからミッションは成功したのだろう。あとはよろしく、と届かない言葉を残して私は意識を手放した。





「ナマエが倒れてたわ」

 そう犬女から聞いて病院に駆け込んだのはもう1時間も前。おそらくこの連日の戦いで能力を酷使したことが原因だろう。コイツの能力は別に無尽蔵に血液を生成できるわけじゃない。あくまで輸血の血はコイツ自身のもので、それを輸血する対象に合わせて無意識下に組み替えて輸血しているらしい。(ってクラウスの旦那が言ってたのを聞いた。)だから、送りすぎればコイツ自身の命が危ない。それを知っているにも関わらず、コイツ……ナマエは戦いが終わるまで延々と送り続けるのだ。

「ホント馬鹿だな、お前……」

 今に始まったことじゃねーが、こいつは前線で戦えないことをコンプレックスに感じているらしい。お前の能力のおかげで俺らがどれだけ助かっているかもしらねーで「前線に立ちたい」とかヌかした、本物の馬鹿野郎だ。こっちは守りたくてしかたねーのに、大人しく守られてもくれない、守るどころかこっちが守られてしまう。
 守りたいと剣を振れば振る程お前を苦しめてしまうことに吐きそうだ。

遺書「おやすみ」

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