「ギルベルトさーん、湯煎終わったよ」
「ああそしたら此方のボウルに入れていただけますか?」
「わ、いい匂い。ナマエとギルベルトさん何作ってるんです?」
チョコクッキーだよーん、とふざけて回答したナマエの姿は真剣そのもので、僕はついふと笑みが漏れた。手伝おうかと言えばプレゼント用だから大丈夫とやんわりお断りされてしまった。そうなってはやることもないので、側にバーススツール(カウンターで使う高めの椅子のことね。)を寄せてせわしなく動き回る彼女を見守る。クッキー生地をオーブンに入れたところで彼女の動きがぴたりと止まった。心配になった僕は火傷でもした?と側に寄って声をかけた。みたところ怪我をしたようではないけれど、とても悲しそうな顔でオーブンをみつめていた。
「レオ、吸血鬼の特徴言ってみて」
「え?あ、えっと、赤いオーラの……」
「じゃなくて、もっと大衆で言えること」
「あっ……鏡に映らない?」
日中の明るい時間帯でオーブンのドアには
僕たちが鮮明に映り込んでいた。
「お兄ちゃんはクォーターだからほとんど人間だって言ったけど、やっぱり本能は吸血鬼なんだよねきっと。でもここには確かに私が映ってて、吸血鬼ではないって言われてるみたい。私って一体何者なんだろうね」
「っ、ナマエはナマエだろ!吸血鬼とか人間とか関係ない。ましてやHLなんだぞ?ここは」
勢いに任せて吐き出した言葉はちゃんと彼女に伝わっただろうか。失言はしてないだろうか。心配事が頭の中を占有していくけど、それを払いのけるように笑顔の彼女は言ったんだ。
「そうだね。ありがとうレオ。私は私だものね」
泥だらけでも生きているから