お前さ、何かほしーモンとかねーの?真性クズで万年金欠野郎のザップ・レンフロさんが何か言ってるー。殴るぞ。何かねーのかよ。無病息災かなぁ。ジジイかよ、そーじゃなくてこう、アクセサリーとか服とか……いやいやプレゼントっつったって、どーせ女から貰ったお小遣いで買ったものでしょ?そんなの要らないわよ!っていうかまずその溜まりに溜まった借金どうにかしなさいよ……
「ん……あれ、ゆめ?」
霧が晴れていくように目が醒める。なんで数日前のことを夢に見たんだろう?疑問に頭を傾げていると、新たな疑問にぶち当たる。冷静に一周見回して確信する。やばい此処知らない場所だ。眠りに落ちる前の出来事を必死に思い出すけど、マスターの店を出てザップにおぶられたところまでしか思い出せない。
「………ん?てことは此処に連れてきたのはザップってこと?」
万が一私をおぶったまま強襲を受けたとしても、あのザップだ。そうそう負けるようなことは無いだろう。やはり私を此処に連れてこれる選択肢はザップしか残らなかった。
「あら起きた?気分はどーお?」
「ザップにしては珍しく可愛らしい子を連れてきたわね。どちらかと言えば美人好きかと思ってたわ〜」
「あの……ここは?」
ノック音もなく開かれたドアからは控えめにこちらを伺ってから2人の異界人が入ってきた。とりあえず害は無いようでホッとした。こういう時にほぼ非戦闘員であることが悔やまれる。私の問いに対して彼女達は快く「地下闘技場よ」と教えてくれた。ほうほうと頷いていると、綺麗に畳まれたワンピースを渡される。
「これ着たら私たちの所に来て。廊下出て突き当たりよ」
「待って、このワンピース何で……!」
「……ザップに聞いてみたらどうかしら?先に行ってるわね」
パタン、と閉じられたドアによって再び部屋には私1人。やはり何度見てもそのワンピースには見覚えがあった。
『あ、このワンピース可愛い』
『ザップさんに買って貰ったら?』
『あれのどこにそんな金あるの?』
『それもそうだ』
「これ……レオとショッピングに行った時試着しなかったやつだ……!!」
私は早々に着替えて廊下を走り抜けた。勢いよく開けた扉の先ではザップとガタイの良い異界人がソファに座ってガラスの先を眺めていた。眩いスポットライト。その光の集まる場所に見慣れた兄の姿を見つけて、私は思わず叫んでしまった。
「ちょっとこれどういうこと?!!」
「あ、起きたか」
「あ、起きたか。じゃないから!説明して!!何でお兄ちゃんが戦ってるわけ?!!」
「……賭けの対象だからなそりゃ」
「はぁ?!!」
お前何言ってんの?と言いたげな顔のザップには申し訳ないけど、お前こそ何言ってんの?である。私はあわあわする口元をぎゅっと結んでここの管理者であろう男の前に立つ。
「おい嬢ちゃん……そこに立つと見えねーよ。どきな」
「いいえどきません。今すぐにこの戦いを止めさせてください」
「ほう、これまた困ったことを言う嬢ちゃんだ……駄目だ、これはザップ・レンフロが持ちかけた話だからな。始めた祭りは……途中では終われないのさ」
やっぱり元凶お前かよ!!!そんな怒りを込めて睨みつけたが、ザップは下手くそな口笛で誤魔化した。ああもう絶対スティーブンさんに言いつけよう。そう決めた私は中断させるのを早々に諦めて他の疑問を投げることにした。
「このワンピース、何で知ってるの」
「レオに聞いた。お前が何も言わねーから。」
「……戦闘服だからショートパンツが良かったのに」
「……それは駄目だ」
「なんでよ。」
「………」
「え?なんて言った?」
ザップの尖った唇から発せられた声は、観衆の悲鳴めいた歓声に飲み込まれてしまった。次こそ聞き取ろうと、身を乗り出してザップの口元に耳を寄せる。
「………おめぇの足は目に毒なんだよ」
だから大人しくしまっとけよ。拗ねたような声でそんな事を言うもんだから、柄にもなくときめいたのは多分寝起きだからだと信じたい。
あなたのそういうところに惹かれた