「今宵はよく踊ったザップ・レンフロ!金はくれてやる、持っていけ」
「わああああい先生ありがとうございますうう〜」
「………気持ち悪い。」

あの後しばらく連戦が続くもいまだ無敗を誇るお兄ちゃんは、流石ライブラのリーダーといったところか。寧ろすっかりノリノリで、今じゃ上は肌着一枚で温まった身体からは湯気が立っている。そんな兄のお陰で得た金でザップは一体何をしたいと言うのか。私はじとりと横目に見てやった。

「オウオウ絶世の美男になんてこと言うんだオメーは。そもそも誰のせいでこんな……」
「私のせいなの?」

しまった、とでも言いたげな表情でザップはこちらを見ていた。何がどうなって、彼の中で私の所為だと結論づいたのだろう。いずれにせよ理不尽極まりないことだけは確かだった。口をもごもごと動かしてなんとか喋ろうとしているザップは、彼にしては珍しい、へたくそな手つきで私の腰に手を回した。ゆっくりと近づいてくる銀髪に私は逃げることも抗うこともしないけど、不満げな表情は崩さなかった。あと数センチに迫ったその時。いつの間にかソファから消えていたオズマルドは何故かお兄ちゃんに頭部を殴られ、会場は一瞬にして静まり返った。そんな中聞こえたレオの叫び声にザップは我に変えったように飛び退く。

そこからは瞬く間に収束してしまった。

合流したレオには私の不機嫌そうな表情ひとつで全てを察されてしまった。そんなに分かりやすいかな、私。彼が転がすスクーターに座って、事の顛末をシェアしていく。どれだけ話してもザップがクズだった事しか理解出来ず、深い溜息をつかざるをえなかった。

「でも不思議なんだよねー」
「え?レオまだ何か気になるの?」
「なんでザップさん、お金が必要だったんだ?それも纏まった金額の」

いつもだったら俺に真っ先にたかりにくるのに。言われてみれば確かに、ここ最近は珍しくギャンブルをしている様子は無かったし、そもそもこいつにはお金を貯めこむ習性が皆無だった。ましてや大きな額の買い物をする必要のある人間ではないし……

「あ、そういえば借金返済に宛てるんじゃない?」
「あーなるほど。でもあのクズなザップさんがちゃんと返そうと思うのかな」
「命狙われたらさすがに返すんじゃね?」
「うーん、信憑性に欠けるなぁ…ナマエ直接聞いてみてよ」
「えーやだよ!面倒くさいじゃん」

結局私はレオに無駄な任務を言い渡されて家路につく。ちなみに疲れ切った兄さんに強襲をしかけたザップを抱えてだ。重い。超重い。これゴミ捨て場に置いていきたい。明日は粗大ごみの日です。





結局あの後途中で目覚めたザップは、私の家にさも当然のような流れで上がってきて慣れた手つきでポットに水を注いでいく。私は作業の片手間に先ほどの質問を投げかけるけど、欠片も相手にしてくれない。ポットをセットし終えてベッドに腰掛けたザップはやっと言葉を返してくれたけど、とんでもなく面倒くさそうな顔をしている。さっきの私みたいだ。

「私の所為ってどーゆーことよー」
「言葉のまんまだろ」
「わっかんないからそれだけじゃ」
「分かれよ」
「……いーし。もういーし」
「は、ちょっ、何処行くんだよ?!!」
「レオん家。イイでしょ?ザップが勝手するなら私も好きにするわよ」

どうせ私も愛人の1人だもんね?思ってない言葉が勢い任せに口から出た。慌てて口を塞いでももう遅い。玄関に向けて進めた身体、ザップに背を向けていても分かる。怒ってる。ザップはかつてないレベルで怒っている。私はあまりの気まずさにそのまま外出するミッションを遂行しようとしたけど、私が動き出すより全然早く空を走って来た赤い閃光に腕を掴まれる。次に足。それから彼の手で顎。かっちり噛み合った視線が痛い。何も言ってくれないザップも悪いはずなのに、私ばかり悪さをしてママに怒られたような気分になる。理不尽じゃないのか。不公平じゃないのか。負けじと睨み返すけど、銀髪ヤンキーに勝てるわけ最初から無かった。

「お前言ってただろ、他の女の金で買って貰っても嬉しくねーって」
「多分100人中100人が同意するよそれ」
「だから、借金全部返したら言おうと思ってた。二人居住可の家も早く探してーし……金作るのはできるだけ早くが良かった」
「待って待って、全然話が見えないんだけど。え?何、家探しって私ザップと二人暮らしするの?初見初耳なんスけど。てか借金全部返済したの?まじで??」
「おう。だからもういいだろ。ナマエ、結婚しようぜ!」

カラオケ行こうぜのノリで言うな。私は痛くなる頭を抱えて、とりあえずブラッディ・バンクを発動させた。お願いだからこれ以上私の心臓を早めないで!!

ずるいったらないね

ALICE+