「フィリップ・レノールです!!どうぞ!よろしく!!!」
「レノール氏には補佐の形で入っていただきますので、御用向きがある場合は従来通り私に、ウッ…」
「「あーあーあーあー…」」
「そういえばナマエの姿が見えないな。ギルベルトさんが痛がればすっとんできてたのに」
「ああスティーブンさんそれはな……」

腰の痛みに屈んだギルベルトさんを通り越した視線の先には、最近久しく使われていなかったはずのナマエの自室があった。なるほど、と頷いたスティーブンに、レオナルドは何が?と言いたげな顔だった。





▽ A few days later. ▽






ギルベルトさんからゲームのお誘いを受けて昼過ぎのライブラに向かっている。いつもはザップさんと僕が二人で苦戦している所にいつのまにか参戦してるのに。珍しい事もあるもんだと思いながらスクーターを走らせていればあっというまに到着した。扉を開けようとして呼ばれている事に気づいた。

「ザップさん?」
「ギルベルトさんならこの中だぞ」
「この中って……ナマエの部屋じゃないですか」
「まあ、お前は知らないのか。まあ原因は俺も知らねーけど、っと。」

不満げなザップさんがドアに押されて俺の隣に来ると、今度こそ全開になったドアから抱えられたナマエとギルベルトさんが出てきた。今回も食べてないそうですと業務連絡よろしく言ったギルベルトさんは、抱えたナマエをザップさんに預けてキッチンへと消えて行った。

「食べてないって、それって」
「こいつラインヘルツ家のことになると駄目なんだよ。旦那の話によるとなかなか嫌な思いをしたらしいけど、詳しい話は本人が言わない限り教えられないとよ」

聞ける訳ねーのにな。そう不満げな顔を今度こそ露骨にだしたザップさんはソファ横の箱から人工血パックを取り出してナマエに渡した。本当に辛そうで、いつもならウィダーよろしく飲んでるパックも、今にも吐き戻しそうな顔で飲んでいる。ふと力を失った手はパックを取り落とした。そしてその手はパックを拾おうとした僕の襟を掴んで、ナマエは弱々しく言った。

「レオ、みて」
「なに、を、」
「私の記憶、見て」

自分では思い出す事のできない記憶。僕に、ザップさんに、皆に知って欲しいと。そして出来るなら一緒に戦って欲しいと。そう告げた彼女の目は真剣なものだった。僕は静かに頷いて彼女の額にそっと自身の額を宛てがう。
それは、長い長い彼女の人生のプロローグ。ギルベルトさんが持ってきたおかゆはどうやら温め直す事になりそうだ。



▽ xxxxx ▽




目を開けると、そこにはナマエと同じ髪色の女性が居た。こちらを見て嬉しそうにしていた。が、一瞬にして視界は、いや、僕の視界の本来の主である幼い頃のナマエの身体は急落下していく。見上げれば腹部を鮮やかに赤く染めた女性がこちらを見て泣いていた。

『見なくたって……分かるわ。私が愛したひとですもの。そして今どんな顔をいているのかも。泣くぐらいなら、お止めになればいいのに……!』
『こうするしか、方法が無いんだ……許してくれブランシェ』

聞き慣れた声にまさか、と背中を汗が伝っていく。うそだ、こんなことあるわけがない。

『もうやめて……ママ……パパ!!』

立ち崩れた女性の向こう側で震える手で銃を握っていたのは、ナマエに「パパ」と呼ばれた人物―――今では行き慣れたカフェ&バーのマスターだった。

そうして冷たい貴方を離せずにいる

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