「『未熟者共の世辞など何の価値にもならんわ』」
「ッチ、」
「だだだだから言ってるの俺じゃないですって!俺はただ通訳してるだけですってばああ!!!」
「……いい気味だなぁ」
お師匠様の手の内でぶらぶらと重そうに揺れるザップさんはなんとも哀れだ。お師匠様(裸獣汁外衛賤厳というらしい)の言葉を通訳するたびにスティーブンさんが舌打ちをお見舞いすると、その度に泣き出しそうな声を張り上げていた。後から駆け付けた俺は直接見てないけど、お師匠様は二属性使いで、スティーブンさんたちが手こずった相手を一人で相手をしたらしい。あのSS先輩が弱るほどのひとだから、相当強いのだろう。
「……今回の相手、汁外衛殿におかれましても強敵でありますか」
「『さあな……どうであろう。ところで、長はどやつだ』」
「はっ。クラウス・V・ラインヘルツと申します」
「『面がまえはおもしろいが、長としては未熟だな。』」
これを見よ、と言われてザップさんの腹をつつくお師匠様の顔こそ見えないが、さそかし呆れ返った表情をしてるんだろう。声がそれを物語ってる。生ゴミだ腐った餅だと言われたザップさんは静かに泣いていた。(そりゃそうなるわな。)
「『と、いうことでこいつは連れて帰る。』」
「「は?!!!」」
「ってちょっ待てよジジイ!!!ってぐわはっ!!!」
「あ、地面に打ち付けられた」
「ウシャシャシャシャ!!シャシャシャシャ!!!」
「だーれが糞虫だ誰が!!!」
「まあまあご老人。ザップは確かに度し難い人間のクズですが、我々にはなくてはならない存在ですので」
「さらりと出るよね本心が!」
「どうか、お考え直しを」
「『……条件がある。』」
そんなこんなで出された条件を飲んで今に至るわけだが。出された条件は、現在急速再生中である血界の眷属の繭。それをザップさんひとりで片付けるというものだった。繭には6つの目に似た器官があり、攻撃をしかけると瞬時に反撃してくるらしい。
「……つまり一気に6つの目を抜かなきゃ死ぬってことかよくそジジイ」
「『よくて両腕切断』」
「ふざけんなジジイ!!!そんなん無理に……」
「……!!ザップさん待ってください!上空から何か来てます!!」
「あァ?!!今俺ぁ忙しい………」
「『来たか』」
「来たかって何が、」
その場にいたライブラメンバー全員が見間違いだと思った。いや、見間違うはずがなかった。目でとらえた姿は着地とともに砂埃で見えなくなったが、彼女の足元には例の繭が確かにあった。その場に緊張が走る。砂埃の晴れた先には、ザップさんに抱きしめられたナマエと血法を伸ばしたザップさん、そして足元にはしくしくと涙を流す繭の姿があった。
「ッナマエ!!無事か?!!!」
「……無事だよ、ごめんねザップ。遅刻しちゃった」
「イタリアン、おめーのおごりな」
「うん、ごめんね。あ、レオ」
「ナマエおかえり、かな?」
「!……へへ、ただいま帰還しました、みんな!」
僕たちは二人の姿にほっと息を吐く。あの日止まってしまったザップさんの時間は、どうやら無事に動き出したようだった。
君と僕ののりしろを結合してできるもの